戦後、日本の製造業は品質を重視する経営を推進し、高いグローバル競争力を実現して飛躍してきた。こうした日本の品質関連の取り組みを一貫して支えてきたのが「デミング賞」で知られる日本科学技術連盟(以下、日科技連)だ。日科技連では「第102回 品質管理シンポジウム」(2015年6月2~4日)を「感動と安心の品質創造と品質保証」をテーマに開催する。日経テクノロジーオンラインは、同シンポジウムの開催に先立ち、シンポジウム登壇者のインタビュー記事を連載する。今回はトヨタ自動車の先進技術開発カンパニーPresidentで専務役員の伊勢清貴氏のインタビュー(下)をお届けする。(聞き手は山崎良兵、中山力)
──トヨタ自動車は最近になって人工知能(AI)に力を入れています。米国にToyota Research Institute(TRI)を設立し、世界的なAI研究者を多数招聘しました。
伊勢氏:AIを強化することで目指すのはまず自動運転の実現です。クルマの死亡事故をゼロにしたいと思っています。これはAIを活用した自動運転の技術を使う効果が大きいと考えています。
ただしトヨタ自動車のコンセプトは無人運転ではありません。ドライバーがいます。クルマを保有する喜びや運転する喜びが大事です。そしていつでも行きたい場所に移動できる。それがコンセプトです。
AIが守護神のごとく、自動運転の技術を使ってドライバーをアシストして目的地に連れて行ってくれる。その競争の中でトヨタもAIに取り組んでいましたが、世界的に見て優秀な人材を集めるのは難しい。
いろいろ検討する中でAIを研究している人は、その世界を突き詰めたいと思っており、就職するにしろ、やりたいことに取り組みたいと思っている。この分野で「トヨタ」のブランド力は残念ながら高いとは言えません。
そこでTRIという独立した研究所を作り、優秀な人材を獲得することを決めました。もちろんAIを活用するのは自動運転だけではありません。ロボット開発や新材料の探索にも使います。