ジェット旅客機「MRJ(ミツビシ・リージョナル・ジェット)」の開発に用いられた革新的設計手法「多目的設計探査(MODE)」は、東北大学の大林茂教授と三菱重工業の共同研究によって開発された。ビッグデータを活用した最適化問題を、設計者がいかに効率的に解決するかという課題に1つの解答を示すものだ。2017年3月に日本科学技術連盟では、「モノづくりにおける問題解決のためのデータサイエンス設計コース」として、同手法の研修を行う。本稿では、MODEの開発者である大林教授が同手法の考え方を紹介する。

東北大学流体科学研究所所長 教授の大林 茂 氏

 古くから「知は力なり」といわれているが、知識が多ければ良い決定が下せるかというと,必ずしもそうではない。物事について知っていることと,物事を決められることは別物である。近年大きな注目を集めているデータサイエンスの主な目的は,ビッグデータなどの理解,すなわち知識の獲得であり、それだけでは、ものづくりに必要不可欠な意思決定には至らない。

 そこで,知識と意思決定を橋渡ししてくれるツールが必要となる。それが「予測」と「最適化」である[1]。工学設計では,最適化は予測ツールである数値シミュレーションと対になって知識と決定を結び,学習(フィードバック)を含めて図1のように循環する構造となる。

図1  知識と決定をつなぐ(参考文献[1]を参考に作成)
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図1 知識と決定をつなぐ(参考文献[1]を参考に作成)