めっちゃ腹立つけど、めっちゃかっこいい
瀬川 前回、杉本さんのお父さんは技術者だったと話していましたよね*1。杉本さん自身は、学生のときから技術関連の仕事をやろうと思っていたんですか。
杉本 いいえ。父親を見て「絶対に技術者にはならんとこう」と思っていました。父は、自分の好きな仕事、自分の好きな技術しかやらないタイプだったんですよ。だから、お金にならなくて、うちは貧乏でしたから。
瀬川 お父さんは、サラリーマンではなかったんですね。
杉本 そうです。個人事業主でやっていました。うちの父は、自分が技術者であったことが誇りだと言い続けるんです、息子に。
長岐 へぇ~。素敵じゃないですか。
杉本 そうです。かっこいいんですよ。めっちゃ腹立つけど、めっちゃかっこいい。トークがめちゃくちゃおもろいんですよ。こてこての技術者なのにマクロ経済とか、すごく知っていて。
リーマンショックの前に「数年後に不景気になる」と言い当てましたから。あのとき、僕は既に起業していましたけれども、「もうすぐ世界中の景気が悪くなるから、会社の経営を気を付けろよ」と。
父は特に趣味を持っているわけではないんですけど、何でも突き詰めるタイプなんです。ある時、「俺、焼きそば作るのうまいで」と何度も言うから、十数年前に一度作ってもらいました。
「そんだけうまいもんやったら、1度作ってや。どうせ高級食材とか使うんやろ」と聞いたら、「違うわ。俺は、冷蔵庫の余りもんだけでめっちゃおいしく作る」と言い切るんですよね。
それで、中華鍋を温めながらウンチクが始まる。「ほら、中華鍋から煙がでてきたやろう? これは、鉄の分子間結合が緩んで、油が抜けて煙になり、鉄と鉄の間に油が入るスキマができているんや」みたいな(笑)。ウンチクを並べながら残り物で作った焼きそば、これがほんまにうまかったんです。
瀬川 料理は、技術者が技術的にいろいろ考えられる世界なんですよ。でも、お父さんを見て「嫌や、嫌や、俺は技術者なんかなりたくない」と思ったんでしょう? 一方で、ブリリアントサービスは、技術者が輝く会社を目指しているわけですよね。なぜ、そうしようと考えたんですか。