人材開発コンサルティング会社に勤める三浦英雄氏をゲストに迎えた「やさぐれ放談」の第3回。会社を辞めた2人のおじさんたち、瀬川秀樹氏、長岐祐宏氏と、三浦氏による鼎談は、「仕事とプライベートの境界」の話題に入っていく。特別な才能を持ったイノベーターが生み出す革新がすべてではない。実は、日常生活のちょっとしたことに、住みやすい社会を実現するイノベーションのヒントは隠れている。

「子供をなめるな」と

左から三浦氏、長岐氏、瀬川氏(写真:稲垣 純也)
左から三浦氏、長岐氏、瀬川氏(写真:稲垣 純也)
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長岐 「越境リーダーシップ」とか、銭湯の活動とか、三浦さんはいろいろなことをやっていますよね*1。でも、越境リーダーシップと銭湯の話は越境することなく分けている。どちらの社会的課題を解決しようと言っているんだから、どうせならその二つの境界を越えて、三浦さんが銭湯で越境リーダーについてのトークをすればいいんじゃないの。

*1 「越境リーダーシップ」については、「社内で叩かれた。それでも前に進む勇気と希望を持つ方法」を参照。

三浦 実は、1度やったんですよ。一昨年に。

瀬川 え? 本当に? 銭湯に越境リーダーシップの話を聴きたい人なんているの。

三浦 そのときは、銭湯を会場に、越境リーダーシップに興味がある人を呼んだんです。でも、銭湯のお客さんに怒られましたけどね。営業時間中にやったので、風呂上がりのおじさんに「お前ら邪魔だ。話すなら外に行け」と…。

瀬川 そうだよね。やはり、ぼーっとする場なんだよ。

長岐 それがトラウマで二つを分けているんだね(笑)。

三浦 ただでさえ、「越境リーダーシップ」という言葉は分かりにくいところがあるのに、そこに「銭湯」の要素を入れるとさらに複雑になってしまいますよね(笑)。

 でも、最近は銭湯に興味を持つ人たちも、いろいろな分野から入ってきています。そういう意味では、何か共通の関心事があると、領域やセクターを越えて、さまざまなリソースを持ち寄って何かを生み出せる機会にはなると思うんです。そういうテーマは、勝手に越境していくじゃないですか。

瀬川 前から聞きたいと思っていたんだけど、「越境リーダー」ではなくて、「越境リーダーシップ」なのはなぜ?

三浦 よくぞ、聞いていただきました。「越境リーダー」は人ですが、「越境リーダーシップ」は、「思いを行動に移す」という行為を指しています。「越境リーダー」というキーワードにすると、「その人がすごい」というイメージになってしまいます。僕が言いたいのは、いわゆる「特別な才能を持ったイノベーターが革新的なことを生み出す」ということではありません。特別な才能がある人ではなくても、自分の思いを実現する行動を起こせるということです。

 越境リーダーシップの取り組みを進めながら、最近改めて分かったことがあります。僕が生み出したいのは「イノベーション」ではないんです。それよりも「調和」だと思っています。