長岐 確かに、会社にいて組織に守られているからできることもあるし、会社から半分出てみて自分の好きなことをやってみたら仕事の価値が分かるということもある。仕事でも「一定期間、会社から半分出てみる」というプログラムがあるといいのにね。それで「また戻ってくる」でもいいし、「外での活動に本格移籍する」でもいい。

三浦 そう思います。

瀬川 最近、プロボノが話題ですけど、実際にやってみると「会社の中で自分がやっていることが、外ではすごく役に立つ」という経験につながることが多い。決して、ものすごくスキルが高い必要は特にないんです。

 普段は「俺、こんなことやっていていいのかな…」と思うようなこと、例えば、「普通に周囲の人の話をまとめる」「議事録を書く」というような大企業のビジネスパーソンが当たり前にやっていることが「すごいですね」と言われる瞬間が結構あります。

三浦 「プロボノ」や「2枚目の名刺」といった取り組みでは、その取り組みで必ず誰か異分野の人と接するわけです。そうすると、「俺は何のために何をやるのか」と次第に触発されるようになります。それが「越境」の発想なのだと思います。

瀬川 三浦さんは、次は何をやりたいんですか。越境もやって、銭湯もやって。

三浦 まだ明確ではないですけど、1年のうち一定期間を南の島で過ごせる取り組みをつくりたいなと。

瀬川 それは、休暇で?

三浦 いや、越境リーダーシップのサミットを沖縄の離島でやりたいんです。日々の生活では、家庭や会社といった判断軸がたくさん増えてきます。そうすると、思考中心の判断になり、直感で判断できなくなりがちです。自然の中に身を置いていると、直感的な自分の感覚が戻ってくるんです。感覚から生まれたビジョンは、なぜか実現していきます。そういう時間を持てるようにするような場づくりを…。

長岐 ああ、面白いですね。外資系の企業では、そういう取り組みがよくありますよね。離れ小島で社員合宿をやって、“日常のゴミ”をすべて洗い流して、新しいアイデアを出し合う。「俺たちは、あそこで一緒に経験した」というチームビルディングも兼ねて。たまにリセットしないと、考え方が一方向だけになっちゃうから。そういうのを越境リーダーシップの取り組みに入れたいわけだ。

三浦 そうです。年に1回、そういう時間を持ちながらサミットが開けるといいなと。

瀬川 でも、そんなことしなくても、三浦さんは毎日銭湯に行って、“日常のゴミ”を洗い流しているんじゃないの?

三浦 いやいや、ほかの人よりも“ゴミ”を吸着する能力が高いもので…。

一同 (笑)。

(三浦さん編、終わり)

(写真:稲垣 純也)
(写真:稲垣 純也)
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