瀬川 やはり、ベンチャー企業の経営者は自分の思いを自分の言葉で伝えているから、同じことを言っていても説得力があるんですよね。言葉は大事です。日本は歴史的に、言葉にすごく尊敬の念を持ってきたのにもかかわらず、工業や製造業の畑で育ってきた人たちは言葉をぞんざいに扱うんだよ。

 例えば、ブランドやマーケティング、宣伝のキャッチフレーズなどを嫌う人が製造業には多い。「いいキャッチフレーズ」を見ると、「こんな言葉遊びしやがって」のようにね。僕もサラリーマン時代は、本当によく叱られました。

 言葉はすごい力を持っているから、言葉にしたことで物事が動くという側面がある。それなのに、「数字とデータだけで事実を示せ」ということばかりを言っている人が幅を利かせるようになった。その取り組みでは感情や人間らしさが抜け落ちている。それが日本の製造業から生まれる出力の幅が狭くなった理由だなと。

瀬川 秀樹(せがわ・ひでき)<br>クリエイブル 代表、元リコー研究開発本部・未来技術総合研究センター所長。大阪大学工学部精密工学科卒業後、32年半、リコーに勤めた。光ディスクの技術者、 光ディスク国際標準化委員会の日本代表団メンバーなどを経て、米国シリコンバレーに5年半駐在した。同地では、ベンチャーへの直接投資(CVC)や、新規事業の提案/立上/撤退に従事。その後、リコーで技術戦略室長、新規事業開発センター副所長、未来技術総合研究センター所長などを歴任。近年はインド農村部でのBOPプロジェクトも興しリーダーを務めた。 2014年9月に退職、同年10月に「<a href="http://creable2014.wix.com/creable" target="_blank">Creable(クリエイブル)</a>」を設立し新規事業開発コンサルや若手育成研修などを行っている。また、「<a href="http://d.hatena.ne.jp/segawabiki/" target="_blank">勢川びき</a>」のペンネームで4コママンガ作家としても活動中。(写真:稲垣 純也)
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瀬川 秀樹(せがわ・ひでき)
クリエイブル 代表、元リコー研究開発本部・未来技術総合研究センター所長。大阪大学工学部精密工学科卒業後、32年半、リコーに勤めた。光ディスクの技術者、 光ディスク国際標準化委員会の日本代表団メンバーなどを経て、米国シリコンバレーに5年半駐在した。同地では、ベンチャーへの直接投資(CVC)や、新規事業の提案/立上/撤退に従事。その後、リコーで技術戦略室長、新規事業開発センター副所長、未来技術総合研究センター所長などを歴任。近年はインド農村部でのBOPプロジェクトも興しリーダーを務めた。 2014年9月に退職、同年10月に「Creable(クリエイブル)」を設立し新規事業開発コンサルや若手育成研修などを行っている。また、「勢川びき」のペンネームで4コママンガ作家としても活動中。(写真:稲垣 純也)

長岐 最近、面白いと思ったのは、広告会社がモノをつくるという話でした。すごく少数ロットでモノを作ってもある程度の収益を確保できる時代になったので、広告会社が自分たちで数十個を作って、それを売るために広告を考える。そういう商品を数多く束ねれば、ビジネスになるじゃないかと。広告会社がメーカーになってもおかしくないのであれば、「昔ながらの製造業」という業種は何なのだろうという感じですね。

瀬川 三浦さん、ベンチャー社長と会って、いろいろと思ったところまでは聞いたけど、それでなぜ今の会社に?

三浦 今の会社(ウィルソン・ラーニング)の理念が、ベンチャー社長たちに聞いた内容と合致していたんです。人がより良い職業人生を送るための指標には、「成功しているかどうか」「充実感が高いか低いか」という二つの軸があって、「人が成功し、充実感高く生き生きと人生を送ることを通じて、組織が成長するお手伝いをすること」が会社のミッションだと。

瀬川 なるほどね。ただ、それはお客さんに向かって言っている話であって、自分の会社の社員にとっても同じかどうかは別かもしれないね(笑)。

三浦 (笑)。実は、入社してしばらくは「売っているものが、世の中でなぜ必要か」を理解できなかったんです。だから、うまく営業もできませんでした。会社で営業プレゼンのトレーニングをしてもらうのですが、周囲から「どうやったら、そんなに眠くなるプレゼンができるのか」と言われるほどで。悩んで「商材に思いが込められないので、売りたくないです」と上司に話したら、「そういうことは、結果を出してから言いなさい」と。