瀬川 そこが普通のサラリーマンのおっさんとは違うところですよね。普通は、会社にいると上から言われたことをやるじゃない。でも、三浦さんは言われたことだけやっているのは「何かおかしい」と考え始める。それで、新しいことに取り組んだわけですよね。
仕事では、会社から求められていないのに「越境リーダーシップ」を始めたし、プライベートでもいわゆる「家庭的な“いいお父さん”」はおかしいと思って、新しいスタイルの音楽イベントを始めた。同じパターンですよ。
編集F 銭湯の音楽イベントも、始めた流れは同じパターンなんですか。
三浦 いきなり銭湯だったわけではありません。
あるとき、住んでいる町のコミュニティーをつくるための音楽祭を開きました。防災関連も絡めたイベントでたくさんの人に足を運んでほしかったんです。
黙って待っていてもお客さんは勝手に足を運んでくれませんから、チラシを配ったり、町会の回覧板と一緒に回してもらったりしたんですけど、結局、来た人は自分たちが知っている人が大半でした。そこで、「地域のためになるお祭りになっていないな」という問題意識を持ちました。
いつも行く銭湯は、単に「自宅の近所で音楽ができるところはないか」と探していたときに見つけた場所です。でも、よくよく考えてみるといろいろな人が来ているんですよね。銭湯って。
瀬川 おじいちゃんとか、おばあちゃんしかいないんじゃないの?
三浦 意外とそうではなくて、若者もいるんですよ。よく高校生が夜のコンビニの前でたむろしていたりするじゃないですか。おじさんたちから見ると「何をやっているんだろう」と思いますよね。銭湯でも、同じ光景があったりするんです。
よく行く銭湯に外湯があって、そこでコンビニの前と同じように集った若者が「お前、あいつのこと好きだろう?」というような会話をしていました。コンビニの前だと、ちょっと「不良かな」と思ってしまいますけど、銭湯だと微笑ましい。
瀬川 へぇ~。そうなの。面白いね。
長岐 それは、結構なコミュニティーですね。
三浦 その銭湯の店長が、たまたまかつて音楽の編集をするエンジニアだったんです。それを知って、よくよく聞いてみると、銭湯の休憩所の裏にライブハウス並みの高級オーディオ機器がそろっていました。でも使われていなかった。