三浦 そういう意味では、取り組みの成果について海外の学会に論文を出したりしたので、会社では「そろそろ行けるんじゃないか」というような雰囲気も多少あります。ただ、先ほど瀬川さんがおっしゃったバランスは難しいところで、あまり急ぐと今までやってきたことが「アウト」というところもあって。

瀬川 そうだよね。米国的なやり方だと、会社として何かが生まれるプロセスを体系化していくという取り組みもあるようだけれども。日本企業は、組織として戦略的にやっていくことがうまくいっていない印象だもんね。

 では、逆に個人のパワーで新しいことを生み出すのかと言えば、個人のパワーはすぐに組織に吸収されちゃって事なかれになる。そうなると、どんなに優れた人材育成のツールを用意しても、「イノベーション」や「越境リーダーシップ」といったキーワードだけが残ってしまう。それだと、もうダメだよね。

三浦 そうなんです。

瀬川 でも、本業をやりながら、越境リーダーに声を掛けて、参加者を集めて、イベントを開催するのも大変だよね。その点、三浦さんの仕事の進め方はすごい。

 リコーでBOPプロジェクトを手掛けていたとき、いろいろなメディアから取材を受けたのよ。日経関連にも記事で載りました。そのときに、ある大新聞なんかはひどかった。事前に何も調べずに取材に来て「何をやっているんですか」と聞くわけです。「だから、何を聞きたくて来たんですか」とムカッとしたもの。

 その直後に「話を聞かせてください」と三浦さんに言われて、イベントヘの登壇を頼まれる前にインタビューを受けた。そしたら、僕のこと、僕の活動のことをものすごく調べてきた。ひどい取材の直後だったから、なおさら三浦さんは偉いなと(笑)。

 一般論で言えば「越境」という言葉には「むちゃくちゃ」な印象もある。実際、「私は、越境タイプです」と自分で言う人には、「単にむちゃくちゃなだけ」というタイプの人も多い。でも、三浦さんは、ものすごくかっちりとやりますよね。

長岐 確かに、話し方や雰囲気がいかにも「外資系コンサルタント」という感じだよね。

瀬川 そうそう。僕みたいにチャラチャラしてないじゃん。話し方もしっかりしていて、真っ直ぐだし。

三浦 いや、それは「仕事モード」だからですよ(笑)。プライベートの僕はジャズのDJをやっていたり、音楽系のイベントをやったりしています。そっちの方面に行くと完全にチャラチャラしていて、仲間たちは僕がサラリーマンだと思っていないですからね。

長岐 へー。どこで何をやっているんですか。

三浦氏が仲間と手掛けた音楽イベント「東京スヰング」。全国から500人が集まる日本最大のスウィングパーティーだ(写真:三浦氏提供)
三浦氏が仲間と手掛けた音楽イベント「東京スヰング」。全国から500人が集まる日本最大のスウィングパーティーだ(写真:三浦氏提供)
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三浦 新宿の歌舞伎町にコマ劇場がありましたよね。その裏に日本で一番でっかいグランドキャバレーがあったんですよ。

 シャンデリアが垂れ下がっていて、ステージがせり出していて、その周りをベルベットのソファがバーンと囲んでいるような。そこにジャズのビッグバンドや、タップダンサー、ラインダンサーがステージでショーを繰り広げ、フロアはみんなオシャレしてダンスをするというイベントをやったりしています。ダンスレッスンもしますよ。

瀬川 ね、分からないでしょう? ネクタイをしてきちんとしていると、だまされるんだな(笑)。そのダンスの様子は見たことないから、想像できないんだけど。

長岐 幅広いですね。

瀬川 最近は、銭湯の改革に取り組んでいるんだよね。

長岐 え、銭湯? 何ですか、それ…。