1年間の活動期間を経て、リアル開発会議のプロジェクトとしては2016年2月末にいったん終結していた開発No.005「全自動調剤監査システム『ドラッガー』」。その後、リアル開発会議としての定例ミーティングはなくなったが、開発自体が終わったわけではない。メンバーは引き続き開発に取り組んでいた。

 そして同年10月、ドラッガープロジェクトの成果がついに日の目を見る。全国から多くの薬剤師が集まる「第49回日本薬剤師会学術大会」(同月9、10日、名古屋国際会議場など)において、メンバーの開発した装置の試作品が披露されたのだ。さらに、同月26~28日に東京国際展示場で開催された医療・福祉機器の大規模展示会「HOSPEX Japan 2016」にも出展され、来場者から多くの反響があった。

 その装置の名称は「一包奉仕」。薬の錠剤やカプセルが入ったシートを投入するだけで、1回分の服用量ごとにパッケージした(一包化した)「お薬カレンダー」を自動で作製するというものである。

一包奉仕の外観
一包奉仕の外観
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手で簡単に切り離せる

 この一包奉仕は、まさしく異業種連携のオープンイノベーションによって誕生した。具体的には、鉄鋼関係の事業を多角的に展開する三島光産(本社北九州市)、調剤薬局向けシステムを手掛けるWindy(本社福岡市)、機構設計が得意な自動車部品メーカー、医薬品および食品の包装材に強みを持つ藤森工業、東海地区で調剤薬局チェーンを営むトーカイメディカル(本社愛知県春日井市)が開発に関わっている。これらすべての企業がドラッガープロジェクトに参加していたわけではないが、結果的にはドラッガーのグループと他で開発を進めていたグループが合流した形になった。

 前述の通り、一包奉仕ではお薬カレンダーを自動で作製する。このお薬カレンダーは、一般的なお薬カレンダーとはやや異なるものである。

 お薬カレンダーというと、布地に薬を収納するためのポケットがたくさん付いていて、薬を飲む曜日や時間帯が記載された壁掛けのケースのようなものを指すことが多い。それぞれのポケットに1回分の服用量を収納しておけば、薬の誤飲や飲み忘れを防げる。医療機関や介護施設、家庭などでは既に薬の管理に活用されている。

 一包奉仕が作るお薬カレンダーは、樹脂製のトレーを用紙で封止して作る。トレーにはたくさんのポケット(凹部)を設けており、そこに1回分の服用量を入れてから用紙で封止する。用紙には薬を飲む人の名前や服用タイミングなどを記載しておく。ポケットとポケットの境界にはミシン目が入っており、薬を飲む際に手で簡単に切り離せるようになっている。切り離したポケットは、ポーションタイプのジャムやバターの容器にそっくりだといえば想像しやすいだろう。

樹脂製トレーを用紙で封止したお薬カレンダー
樹脂製トレーを用紙で封止したお薬カレンダー
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