突き詰めればスポーツビジネスは「観る」と「やる」しかないと、世界のスポーツイベントの観戦チケットを手広く扱うワールドスポーツコミュニティ 代表取締役社長の衞藤未来人氏は言う。日本から海外へ試合観戦に行く人、海外のチームに選手としてチャレンジする人は増える傾向にある。それは逆に、日本のスポーツ業界の脆弱さを浮き彫りにする契機にもなる。プロレーシングドライバーとして海外でも活躍するセクナ モータース 代表取締役社長の白石勇樹氏は、日本と海外のスポーツビジネスには大きな考え方の違いがあると指摘する。スポーツに限って日本と海外を比較するだけで、シビアな現状が見える。そこにどう立ち向かっていけばいいのだろうか。
左から、衛藤氏、白石氏(写真:加藤 康)
左から、衛藤氏、白石氏(写真:加藤 康)
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三反田 衞藤さんの会社は、競合が多そうな印象ですね。

衞藤 観戦チケットだけをやっている、参加エントリーだけをやっているというような企業は、たぶんあると思いますが、六つの事業部を融合させて取り組んでいるような形態の企業はうちだけでしょうね。

 スポーツを「やる」ことに焦点を当てて、ダンスチームなどの育成事業に力を入れているのは、日本のスポーツ業界がもっと盛り上がらないといけないという思いがあるからなんですが、スポーツ関連のいろいろな人の話を聞いていると、何というか、非常に停滞している感がありますね。新しいことをやりたがらない、余計なものは排除する。例えば、日本人選手をもっと海外へ出しましょうとか、海外のものを取り入れましょうよ、という掛け声はあっても、実現には時間がかかる。

 だったら、まずは観戦する人を動かそうと思っています。日本のスポーツファンに海外のスポーツをたくさん観てもらう。そうすれば、米国の大リーグを見た人が日本のプロ野球を見て違和感を感じるとか、欧州のクラブチームのプレーを見たら、Jリーグに物足りなさを感じるだとか。そういう感情がたまれば、スポーツ業界を動かす圧力になるんじゃないかと、そんなことを考えています。

三反田 普通、海外のスポーツ観戦チケットってどのように買うんでしょう。

衞藤 個人でネットで検索してうちにたどり着くというケースが多いですが、あとは、旅行会社経由ですね。新婚旅行のついでにサッカーを観たいとなると、その旅行会社からうちにたどり着く。比率では、旅行会社経由はまだまだ少ない。

三反田 この先、日本ではラグビーのW杯、東京オリンピック・パラリンピックという大きなスポーツイベントが開催されるわけなんですが、その辺をどうご覧になっていますか。海外から日本で行われるイベントの観戦チケットを確保したいという話は出てくるだろうし、極端な話、買い占めなんかも起こるんじゃないでしょうか。日本開催なのに、日本人が観られないなんてことがあるのかもしれないと思うんだけど。

衞藤 オリンピックはオフィシャルの大手が押さえているので、そう簡単にはいかないとは思いますが、そうですね、買い占めは現実としてあるかもしれません。実際、欧州のサッカーなんて現地で見られない人もいるくらいで。年間シートで半分以上埋まっていて、観戦チケットが一般販売されない試合も結構あるんです。

 弊社では一般販売されないものも手配して扱っていて、例えばマインツ(ドイツのサッカーリーグ「ブンデスリーガ」のチーム)だと毎試合最低10人分の枠を契約でおさえているので、現地の人から問い合わせがあったりします。