白石 でも、レースの世界なんて勝つか負けるかのシンプルな世界ですから。

リアル 会社もそんな感じですか。

白石 レースを大事にやっていきたいというのはもちろんですが、そこからフィードバックされるものを役立てていきたいと率直に思っています。ホンダがF1を実験室と呼んだように、レースの過酷な環境で得たものを公道の市販車に戻す。僕はそれを電気版でやろうというだけ。技術証明なんてすごくシンプルで、ル・マン24時間で結果を出せばいい、それだけのことなんですから。

三反田 テクニック、技術の話は出たけど、スポンサー集めの件はどうですか? ほかのレーサーもいろいろな活動してスポンサーを集めていると思うんだけど。

白石 最初にレースの世界のことを申し上げると、レーシングドライバーはチームからオファーが来ても、それで決まるわけじゃないんですね。そこから自分でお金を持っていって、それで契約が成立する。

三反田 久弥(さんたんだ・ひさや)。パラシュート 代表取締役社長。2000年に、一生付き合える仲間作りをテーマに若手経営者の会である「若手商店街」を設立。現在、北海道、関東、東海、関西、九州、沖縄の6支部があり、会員数は約400社を数える。現在、全国代表理事。他に日本介護協会常務理事やグローバルキャリア協会理事などを歴任する (写真:加藤 康)
三反田 久弥(さんたんだ・ひさや)。パラシュート 代表取締役社長。2000年に、一生付き合える仲間作りをテーマに若手経営者の会である「若手商店街」を設立。現在、北海道、関東、東海、関西、九州、沖縄の6支部があり、会員数は約400社を数える。現在、全国代表理事。他に日本介護協会常務理事やグローバルキャリア協会理事などを歴任する (写真:加藤 康)
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三反田 ほかのスポーツにはない、すごい業界だよね。お金を払わないとプレーできない。

白石 そうなんです。F1の世界もそうなりつつありますが、F1より下のカテゴリーでは完全にペイドライバー。レーサーが自分で支払って乗っている環境がほとんどです。レーサーとしてステップアップしていくには、お金との戦いがある。これがリアルな話。僕も19歳でレースデビューするときから、お金との戦いでした。

 スクールを卒業してレースデビューを控えていたときに、高校時代に貯めた500万円は使い切ってしまっていたので、貯金はゼロ。チームに支払うお金なんてなかったし、普通に働いていたんじゃ無理だと思って、19歳のときからスポンサー獲得の営業活動をするようになりました。もう今見たらちょっとヤバイくらいに下手くそな企画書を持って(笑)。当時住んでいた和歌山の周辺企業を1軒1軒回りました。

 それで62社回って、1社。1社だけOKをもらえたのが地元の動物病院だった。その病院にはフェラーリが止まっていて、これは行けるかなと入ったら話を聞いてくれて、1年間スポンサーをしてくれることになって。それでようやくレースデビューですよ。おかげさまで、そのシーズンに年間ポイントランキング2位を獲って、ステップアップしていくことができた。そもそもの僕のレースの始まりは動物病院なんです。

 レースカテゴリが上がるにつれて必要資金も大きくなっていきます。今のクラスでは年間1200万円くらい。僕は三反田さんと知り合わなかったら、今のレーシングドライバーとしての地位はなかったと思ってます。今年のスポンサーの8割が「settenn」で知り合った社長さんなんです。

三反田 settenn自体も白石さんのスポンサーになっています。会員に紹介しておいて、オレがやらへんのはおかしい、絶対突っ込まれるなと思って(笑)。今F1で日本人レーサーが乗れてないのはやっぱりスポンサーの問題もあるんでしょうか。

白石 それももちろんありますが、「メーカーとしての“売り先”としてどうか」という見方もあります。フェラーリは、ちょっと前はインド、今は中国のレーサーを積極的に起用している。「うちの車を売りたいから、雇ったドライバーの母国でレースを見てもらおう」ということですね。日本の自動車事情はその点でも厳しいものがあります。

(次回に続く)