白石 5歳のとき、アイルトン・セナが亡くなって、テレビで1週間も、2週間も追悼番組をやっていたのを見て、衝撃を受けたんだと思います。

 バイクを始めたのは7歳のころで、プロになれるかもとモトクロスを続けていたんですが、僕の中ではどこかF1に乗っているイメージで。“タイヤが2本足らない”と感じていた。それで中学3年生でバイクをやめたんですが、親とひと悶着あって、「4輪をやるなら勝手にしろ」と。

 「資金も含めて何から何までノータッチだから、自分でスタートして自分で道を拓いていきなさい。その代わり、高卒資格だけは絶対に取っておきなさい」と言われました。高校の3年間はアルバイトをしまくって500万円貯めました。鈴鹿のレーシングスクールは、半年で費用が500万円かかるんです。

三反田 高校生で500万円も貯めたんだ。すごい。衞藤さんは、なぜ起業したんですか。

衞藤 僕はそんなかっこいい経歴があるわけではなくて、ただスポーツが好きで、今スポーツビジネスの会社をやっています。小さいころから野球、サッカー、バスケといろいろやってきて、最終的にバスケを選びましたが、高校のときに選手としての限界を感じ、それでもスポーツの道に進みたくて、選んだのがトレーナーでした。

衛藤 未来人(えとう・みきと)。ワールドスポーツコミュニティ 代表取締役社長。愛知県出身。スポーツ系専門学校卒業後、プロのトレーナーとして数々のスポーツ選手と出会う。その経験から、スポーツは「観る」と「やる」しかないと感じ、2008年に日本で初めての海外スポーツサービス専門会社、ワールドスポーツコミュニティを設立した。現在は、スポーツには「観る」「やる」「支える」があると考え、スポーツに関わる多くの人を支援している。好きな言葉は「迷ったらGO!」(写真:加藤 康)
衛藤 未来人(えとう・みきと)。ワールドスポーツコミュニティ 代表取締役社長。愛知県出身。スポーツ系専門学校卒業後、プロのトレーナーとして数々のスポーツ選手と出会う。その経験から、スポーツは「観る」と「やる」しかないと感じ、2008年に日本で初めての海外スポーツサービス専門会社、ワールドスポーツコミュニティを設立した。現在は、スポーツには「観る」「やる」「支える」があると考え、スポーツに関わる多くの人を支援している。好きな言葉は「迷ったらGO!」(写真:加藤 康)
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 専門学校を出て20歳でスポーツトレーナーとして働き始めたんですが、最初からいろいろなところに個人事業主として売り込みに行き、仕事をいただいていました。転機になったのは、22歳のときにフィットネスクラブの経営に誘われたこと。役員になって、経営のイロハから教えていただきました。1年半そこでお世話になりましたが、その会社は倒産してしまって、最後の処分は私が一人で担当しました。

 会員数1000人くらいの高級フィットネスクラブだったんですが、黄色のテープで“KEEP OUT”、差し押さえられたビルの前にパイプイスを持ってきて、日がな1日待っている。倒産したことなんて知らずにいらっしゃるお客様1人1人にご説明して、申し訳ありませんと頭を下げるのを1カ月くらいやって。さすがに少し精神的にも参っちゃいました。

 そこで少し距離を置いて、別の角度からスポーツ業界を見てみようと思って、スーパーバイザーという立場で、フランチャイズの経営指導などをやったんですが、フィットネスクラブでの経験がすごく生きたし、私自身経営に興味を持つようになって、自分なりに勉強もするようになりました。

 そして、28歳のときに独立。ずっと海外のスポーツが好きで、スポーツで起業することをずっと真剣に考えていたら、あるとき、スポーツは「観る」と「やる」しかないなと気付いたんです。観るには、観戦チケットが必要だし、やるには何らかのエントリーが必要だろう。その二つを事業としてスタートしました。

 チケットを扱う対象は海外のスポーツで、欧州のサッカー(プレミアリーグ、ブンデスリーガ、リーガエスパニョーラ、セリエAなど)、米国の4大スポーツであるMLB、NBA、NFL、NHL、モータースポーツではF1はもちろん、Moto GP、ル・マン、インディも手掛けています。ニッチな部分まで含めたスポーツ観戦チケットの手配をやっていまして、テニス、ゴルフ、ラグビーやフィギュアスケートなどもそろえ、今はほぼ世界中の観戦チケットを手配できる体制になっています。