2019年のラグビーワールドカップ、2020年の東京オリンピック・パラリンピックという二つのビッグスポーツイベントを控えている日本。この4、5年で、どのように、何に備えるのか、さまざまな業界で熱心に議論が続けられている。今回は、その「スポーツ」に最も近い領域から2人の経営者が登場。現役のプロレーシングドライバーでありながら、同時に自ら起業したセクナ モーターズの代表取締役社長を務める白石勇樹氏、そしてスポーツを見る上で欠かせないチケットを手広く扱うワールドスポーツコミュニティ 代表取締役社長の衞藤未来人氏だ。スポーツビジネスのど真ん中にいるからこそ見えてくる、業界の現状と課題、そして未来。分かっているようで本当はなかなか本質に迫りがたいスポーツ業界に鋭く切り込んでいく。
左から、三反田氏、衛藤氏、白石氏(写真:加藤 康)
左から、三反田氏、衛藤氏、白石氏(写真:加藤 康)
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三反田 今回のキーワードは「スポーツ」です。スポーツに関係したお二人をお招きしましたが、まず、それぞれ簡単な自己紹介をお願いします。

白石 レーシングドライバーの白石です。7歳から15歳までモトクロスレースをやった後、4輪に転向しました。18歳のときに中嶋悟さんが校長を務めている「鈴鹿サーキットレーシングスクール」に入り、首席で卒業して自動車レースの世界へ行きました。レース戦績で言うと、2011年に中国最高峰のAFR(アジアン・フォーミュラ・ルノー)でアジアチャンピオンを獲得しました。

 2014年からは、日本でスーパー耐久というツーリングカー(レーシングカーに対し一般車を指す)のレースに参戦するとともに、電気自動車(EV)のスポーツカー開発に取り組むGLMという企業でテストドライバーを務めています。今季は、今シーズンから新しく設けられたFIA-F4というフォーミュラカーレースにも参戦しています。

 そして、2015年4月にセクナモーターズを設立しました。レースという過酷な環境下で利用されている電気自動車のパワーユニットの技術を、市販車にフィードバックする事業をメインにしています。もう一つの事業として、プロのレーシングドライバーがトレーニングで使用する本格的な「レーシングシミュレーター」(実際にGが発生する)を一般の人にも体験してもらうような取り組みも行っています。

白石氏は、2011年にAFRでアジアチャンピオンを獲得した(写真提供:セクナ モータース)
白石氏は、2011年にAFRでアジアチャンピオンを獲得した(写真提供:セクナ モータース)
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白石氏が創業したセクナ モーターズでは、レーシングシミュレーターの一般体験なども手掛けている(写真提供:セクナ モータース)
白石氏が創業したセクナ モーターズでは、レーシングシミュレーターの一般体験なども手掛けている(写真提供:セクナ モータース)
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リアル開発会議 なぜ、会社を立ち上げたんですか?

白石 レーシングドライバーとしてステップアップするには、三つの要素が必要なんですね。「ドライバーとしての技量」「スポンサー」、そして「技術力」です。分かりやすく言うと、かつて日本人レーサーがF1に乗れたのは、日本の技術が付いてきたから。トヨタ自動車や、ホンダがバックにいて優れた技術が手に入るからF1チームも日本人レーサーを起用する。なので、僕もそういう優れた技術を武器として持っておきたい。そうしないとF1チームに見てもらえません。

白石 特に今、F1も電気化が進んでいます。去年からハイブリッドカーになって、モーターと小さなエンジンで車が走っている。将来的にはもっと電気化は進むだろうし、早めにそちらに目を移したほうがいいだろうと思いまして、ちょうど2014年からGLMで電気自動車の開発ドライバーにもなったことだし、僕自身のレーシングドライバーとしてのステップアップを図るために会社を設立したということです。

衞藤 質問してもいいですか。モトクロスから4輪に移ったきっかけって何だったんですか。