価格競争する製品を扱うだけでは、自社の首を締めるばかり。企業の規模を問わず「高付加価値型の製品を」が合言葉になっている。しかし、その「高付加価値」が難しい。では、そもそも「付加価値」とは何なのか? その根本的な問いに答えるのが、今回登場するグラフィックホールディングス代表取締役の山本壮一氏だ。グラフィックデザイン会社から10業態のホールディング事業で付加価値を追求する企業の創業者だ。今回は同社が、一つの事業からまた一つの事業へと業態を広げていった様を語ってもらった。

10業態の事業を抱えるグループ

三反田 早速ですが、山本さんはどんな仕事をなさっているのか、自己紹介も兼ねて話していただけますか。

山本 グラフィックホールディングスは、もともと「ノースグラフィック」というデザイン会社からスタートしていまして、現在は10業態の事業を抱えるグループです。

三反田 10業態あるってすごいですね。

山本 壮一(ヤマモト・ソウイチ)。グラフィックホールディングス代表取締役。1980年、北海道札幌市生まれ。札幌国際大学観光学部卒。旅行業、観光学、北海道の観光資源について学ぶ傍ら、在学中にデザイン会社を起業。2005年にノースグラフィック設立。2015年に純粋持ち株会社 グラフィックホールディングスを設立。5社10事業部から成るグループとなる(写真:加藤 康)
山本 壮一(ヤマモト・ソウイチ)。グラフィックホールディングス代表取締役。1980年、北海道札幌市生まれ。札幌国際大学観光学部卒。旅行業、観光学、北海道の観光資源について学ぶ傍ら、在学中にデザイン会社を起業。2005年にノースグラフィック設立。2015年に純粋持ち株会社 グラフィックホールディングスを設立。5社10事業部から成るグループとなる(写真:加藤 康)
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山本 最初はグラフィックデザインの会社でした。僕自身もデザイナーとしてスタートしています。当時、学生による起業が目立ち始め、僕も大学3年生、21歳のときに会社を立ち上げました。「ナチュラルバイシクル」というアパレルブランドと、グラフィックデザインを扱う会社です。

 ナチュラルバイシクルは、北海道で生まれ、北海道で育った、フロム北海道ブランド。名前にバイシクルと入っていますが、決して「自転車乗りのための」という意味ではなく、自転車くらいのスピードで世の中を見渡そう、そしてそのライフスタイルをこの服を着て楽しもう、というコンセプトです。

2003年にナチュラルバイシクルで初めて制作したカタログ。 服だけを見せるデザインではなく、どのようなシーンに合う服なの かというライフスタイルを想像させるデザインにした(写真:グラフィックホールディングス)
2003年にナチュラルバイシクルで初めて制作したカタログ。 服だけを見せるデザインではなく、どのようなシーンに合う服なの かというライフスタイルを想像させるデザインにした(写真:グラフィックホールディングス)
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 このブランドの背景には、自然、北海道、アート、音楽、アウトドアというようなキーワードがあります。このアイデアを軸にしたブランド展開の支持者が増えてきたころ、洋服以外の接点でも同じ顧客層に対して何かサービスを提供できないかと考え生まれたのがナチュラルバイシクルを販売するショップに併設した飲食店です。これをきっかけに、私たちの異業種展開がスタートしました。

 当時は、何をするにしても自分たちには「実績」も「経験」がなかった。それが逆に固定概念にとらわれず、「良い」と思ったことを、まっすぐに実行できる環境だったのだと思います。「お客様に様々な商品やサービスを通して、私たちとの設置面をいかに広げていけるか。お客様にもっと私たちが提供できる価値はないか。」そのような視点で走り続け、新しいサービスがどんどん増え、今ではアパレル、飲食店、IT事業、美容、中古車買取、建築など合わせて10の業態に広がりました。