高橋 モノを売るということとともに、日本人はもう少し本物を見極める目を持ったほうがいいように思いますね。先ほどの武谷さんの娘さんの話が面白かった。日本人は欧米でブランディングされたものは無批判に受け入れるというところがあるじゃないですか。でも、アジアはそうじゃありません。流行に乗った、よく分からないけど売れている、というものでは、グローバルでは通用しない。ちゃんとグローバルで耐えられる本物の商品、サービスというのを目指さないといけないと思います。

武谷 本物のブランディングと、マーケットの扱いって難しいところがありますよね。例えば芋焼酎なんて面白くて、卸す酒屋さんを全国20軒と決めて、それ以外では売らなかった。それで欲しいけど買えないという人がどんどん出てきてブームに火がついて…。

 ブームになってからは、あるメーカーは大衆路線に切り替えて大きなマーケットを取りに行った。またあるメーカーは、逆にブランディングを強化して、ハンドリングしながら売っています。

編集T 会社を大きくすることとブランディングすることは、どこか相反する部分があると思いますが、その辺はどうお考えでしょうか。

高橋 うーん、上場を考えているわけではないから、そこまで考えているわけじゃありませんが。思いを込めた商品が作れて、きちんと供給できて、新商品の開発に時間とお金が割けて、産業化につながるサイクルが生まれ、膨らんでいった結果として会社が大きくなるならいいなという感じでしょうか。

編集T 例えば生産が沖縄では間に合わない、海外拠点が必要だ、となったら?

高橋 そういう可能性はなきにしもあらずですが、例えばタイで生産するようになるなら、それはそれで別のブランディングが必要になっていくんだろうと思いますけど。その土地土地に合ったブランディングをやっていけばいい。

武谷 僕も高橋さんが仰るように、会社の規模は結果論という考え方がありました。また、売り上げが見込めない、市場の成長が見込めない、最低でも成長して単体で1億円くらいの利益が出なければ手が出せないというようなことは経営者として考えてはいるわけです。

 一方で、「いろいろな事業をやる中で出会うベンチャーの若手経営者と一緒に、自分も成長しながら拡大していけるといい」ということも考えるようになりました。自分のグループだけではなく、関わった幹から枝が出て花が咲けばいい。そういうイメージでやっています。私も50歳になったものですから、あと10年くらいはそうやって細胞分裂するように増殖する仕掛けを作っていきたいですね。

三反田 久弥(さんたんだ・ひさや)。パラシュート 代表取締役社長。2000年に、一生付き合える仲間作りをテーマに若手経営者の会である「若手商店街」を設立。現在、北海道、関東、東海、関西、九州、沖縄の6支部があり、会員数は約400社を数える。現在、全国代表理事。他に日本介護協会常務理事やグローバルキャリア協会理事などを歴任する (写真:加藤 康)
三反田 久弥(さんたんだ・ひさや)。パラシュート 代表取締役社長。2000年に、一生付き合える仲間作りをテーマに若手経営者の会である「若手商店街」を設立。現在、北海道、関東、東海、関西、九州、沖縄の6支部があり、会員数は約400社を数える。現在、全国代表理事。他に日本介護協会常務理事やグローバルキャリア協会理事などを歴任する (写真:加藤 康)
[画像のクリックで拡大表示]

三反田 せっかくなので、最後に、若い人たちへのメッセージをお願いします。

高橋 これから社会に出る子たちは、ネットやSNSで情報過多な時代で、まずその中から本物を見極める判断能力が必要になるでしょう。そのためにはいろいろな人に会うことです。大勢の人に会い、自分が何者なのか、自分は何をしたいのか、そういうことを見極めるところから始めてほしいですね。

武谷 事あるごとに「リスクは取りたくない」「リスクのない会社に入りたい、リスクのない仕事をしたい」という話を若い人たちから聞きます。だけど人間全員に共通しているのは100%死ぬということなんです。生物は生きていれば必ず死ぬ。そういうリスクまみれの世界で生きていることを踏まえて、その中で自分が何を経験してどう生きるのか、どう社会にコミットしていくかを考えていかないと。リスクがあるなしとか、そういうことに捉われていると本当のことが見えないんじゃないかという気がします。

三反田 お二人の間で、東南アジアを舞台に面白いコラボレーションが生まれそうな予感がしますね。今日は、ありがとうございました。