ディスプレイ用ガラスは、ディスプレイ・パネルのサプライチェーンにおいて部材の一つとして位置付けられる。中国への出願は、2011年までは日本国籍出願人の出願件数が最も多かったが、近年、中国籍出願人からの出願が急激に増加している。現況のままでは将来的には我が国が持っている技術的優位性が失われ、事業環境が厳しくなると予測される。部材メーカー間の水平連携や各部材メーカーおよびパネルメーカーの垂直連携を進めるなど、これまで以上に各方面の連携の強化が必要である。

 ディスプレイ用ガラスは、ディスプレイ・パネルのサプライチェーンにおいて部材の一つとして位置付けられます。ディスプレイは画質の向上やカラー化の進展により、今日ではパソコンや携帯電話(スマートフォンを含む)などのIT機器や大型液晶テレビのような家電製品、大型液晶ディスプレイを応用したサイネージなど、民生のみならず業務用途でも幅広く使われています。

 ディスプレイの応用産業には我々の現在の生活になくてはならない製品が数多くあり、ここから生じる様々なニーズへの対応が各部材の競争優位獲得のために必要となります。

 このような背景のもと、特許庁は「平成27年度特許出願技術動向調査」において、中国におけるディスプレイ用ガラスの製造技術に関する特許出願動向を調査し、その実態を明らかにしました(特許庁による調査レポート「ディスプレイ用ガラスの製造技術」の概要(PDF形式)こちら)。本調査の主要部分を本稿で紹介します。

 図1に本調査の技術俯瞰図を示します。ディスプレイ用ガラスには、ブラウン管ガラス、カラーフィルターや駆動回路などを組込むためのガラス基板として使うフラットパネル用ガラスとタッチパネルのカバーガラスとして使うタッチパネル用カバーガラスなどがあります。基板用ガラスは、発光方法によりガラスの成分や要求性能が異なり、現在は液晶用ガラスの生産が大部分を占めている状況です。

図1 ディスプレイ用ガラスの製造技術の技術俯瞰図
図1 ディスプレイ用ガラスの製造技術の技術俯瞰図
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 ディスプレイ用ガラスの製造技術は、①ガラスの成形技術、②ガラスの加工技術、③ガラスの組成開発、④ガラスの表面処理、⑤ガラスの接着技術などから構成されています。すなわち、ガラスの原料を調製して、溶解、成形するHOT工程、次いでここで得られた大型基板に切断、研磨など加工、表面処理を行うCOLD工程があります。さらに、ガラスは、ディスプレイの一部材でありカラーフィルター、センサーや駆動回路などを組み込んだ状態でガラスの表面処理や接着を行うことがあります。製造工程の一部である検査、梱包および出荷については今回の調査の対象外です。このようにディスプレイ用ガラスの製造は、多岐にわたる技術で構成されています。また、ガラス基板はディスプレイパネルのサプライチェーンの一部を構成しており、技術の方向はディスプレイへの要請と密接に関係しています。