患者の負担を軽減し、治療期間の短縮を可能にする低侵襲医療機器。低侵襲医療機器は患者に設けた小さな開口部から挿入して治療を行う際に用いられ、循環器系カテーテルのほか、ステントやカテーテル誘導装置といった種類があり、冠動脈の閉塞・狭窄、脳動脈や大動脈の動脈瘤、不整脈などの手術や治療に用いられています。世界の人口増加や新興国の発展に伴う中間所得層割合の増加により、低侵襲医療の需要者は増加していくものと予測されており、低侵襲医療機器の重要度は高まっていくものと考えられます。

ステント=血管狭窄部の拡張処置後、血管が再び収縮しないように血管内に残置される筒状部材

 特許庁は「平成26年度特許出願技術動向調査」において、低侵襲医療機器のうち循環器系カテーテルおよび関連機器を対象にした特許出願動向や研究開発動向を調査し、当該技術の現状を明らかにしました(特許庁による調査レポートの概要(PDF形式)はこちら)。この調査により、特許出願では米国が大きく先行しているものの、一部の分野では日本も存在感を示していることが分かりました。同調査の主要部分を本稿で紹介します。

 図1に本調査の技術俯瞰図を示します。手技(治療等の処置の方法)、低侵襲医療機器の技術的課題と解決手段、さらにそれで実現される低侵襲医療機器の構成要素として図示のような要素・技術が挙げられます。

図1 技術俯瞰図
図1 技術俯瞰図
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