電気化学キャパシタは、蓄電容量の大容量化に伴って、用途が拡大している。従来の携帯機器用だけではなく、自動車用や再生可能エネルギーの電力貯蔵用などに利用されるようになってきた。電気化学キャパシタの技術開発は、これまで長らく日本がリードしており、技術の蓄積があると考えられるが、近年、中国を始めとする各国が力を付けてきている。今後は、各国の動向を注視しつつ、日本の強みを維持向上させていく必要がである。

 電気化学キャパシタは、二次電池のように電力を充放電できる蓄電デバイスです。二次電池よりも高速に充放電ができ、充放電効率が高く、充放電サイクル寿命が長いという長所があります。

  電気化学キャパシタの代表である電気二重層キャパシタ(EDLC)は、1978年に松下電器産業(現パナソニック)が携帯機器などのメモリーのバックアップ用途として実用化して以来、広く使用されてきました。近年、蓄電容量の大容量化に伴って、用途が拡大しています。例えば、太陽電池の昼間の発電電力を蓄電し、夜間に放電して機器へ電力を供給するといった電力貯蔵用、フォークリフト・建設機械・自動車などのブレーキ時にエネルギーを回収するエネルギー回生用にも用いられるようになっています。

  また、政策的な後押しによっても電気化学キャパシタの市場が拡大しています。例えば、中国は、路線バスに対してハイブリッドバス及び純電動バスの導入を促進するための政策を実施しています。2006年に上海で大規模な商業運転を開始した、電気化学キャパシタを主電源とする路線バスのシステムは、今では中国各地に展開されるとともに、イスラエルやブルガリアにも輸出されています。

 このような背景の下、特許庁は「平成27年度特許出願技術動向調査」において、電気化学キャパシタに関する特許出願動向を調査し、その実態を明らかにしました(特許庁による調査レポートの概要(PDF形式、こちら)。なお、平成22年度にも同じテーマで同様の調査を行っており、今回は、前回の調査以後の出願動向を調査し、前回の調査結果とあわせて取りまとめました。本調査の主要部分を本稿で紹介します。

 図1に本調査の技術俯瞰図を示します。本調査では、図1に示す観点、すなわち、キャパシタの種別、構成要素(電極・集電体、電解質、セパレータ、ケース・端子、リチウム供給源など)、セルの製造方法、用途、課題の観点で特許出願を分類しました。

図1 技術俯瞰図
図1 技術俯瞰図
[画像のクリックで拡大表示]