水処理の重要な要素技術である水処理膜に関して、我が国は国際的に技術開発を先導してきた。しかし、最近は中国企業及び重電メーカーと連携した欧米勢の新規参入の攻勢が拡がり、さらに存在感を強めるに至っており、研究開発や特許出願において先行を許している分野が存在する可能性がある。特に、今後、我が国の水処理に関連する産業が持続的に発展していくために、アジア各国市場での事業展開の重要性が認識されており、我が国企業等においてアジア各国市場での事業展開を念頭に置いた技術開発戦略、知財戦略の策定が重要である。

1. 技術概要

 水資源には、河川水、湖沼水、地下水、再生水、下水、雨水、廃水(工業等)、随伴水があります。処理後水及び副生物の用途としては、飲料水、生活用水、農業用水、工業用水、純水・超純水、電解水・機能性洗浄水、放流水及び資源回収(エネルギー、貴金属、重金属等)があり、水処理の応用分野は多岐に亘っています。水処理は大きく分けると上水処理と排水処理に分かれ、さらに、排水処理は、産業排水処理と下水処理に分かれます。図1に概念図を示します。

図1 水資源、用途および水処理の全体感
図1 水資源、用途および水処理の全体感
出典:上田新次郎「日本企業のグローバル水市場への取り組みと技術戦略」(2015)に加筆
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 本調査の対象は、技術俯瞰図(図2)に示す通りです。水源(処理対象)から、水処理技術としての物理化学的処理、造水・高度処理、生物学的処理、汚泥処理、水処理管理システム・スマートメンテナンス、造水さらに水検査と水処理管理システム・スマートメンテナンスを用いて如何なる用途の水を得るかについてです。

図2 技術俯瞰図
図2 技術俯瞰図
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