ナノファイバーは、先端技術を支える材料として、世界各国で活発な開発が行われている。日本は特許出願件数が多く、日本の技術優位性が維持されている。一方、論文発表件数は中国が一番多く、次いで欧州、米国、韓国が続いており、日本からの論文発表件数比率は8.6%と少ない。日本企業が他国に先駆けて実用化を図り技術開発競争や市場競争で優位に立つには、各企業が自社技術に頼るだけでなくオープンイノベーションによって川下企業や大学・公的研究機関などが持つ技術を組み合わせて、素材の機能・特性を生かした革新的な製品開発につなげていくことが必要である。

 ナノファイバーは、軽量、高強度といった特性を有し、構造用途をはじめとする様々な応用が期待され、研究開発プロジェクトも進んでいます。ナノファイバーは、それ自体の物性に基づく単独利用のみならず、複合材料の分野では汎用品から先端技術材料、さらには今後の用途展開の検討段階にあるものまで、様々な工学的側面を持っています。このため、ナノファイバーの研究開発動向を的確に捉えるには、どのような内容の技術がどのような分野に特許出願されているのか、どのような技術的段階にあるのか、また各国がどのような研究開発をしているのかなどの分析が必要とされています。

 このような背景の下、特許庁は「平成27年度特許出願技術動向調査」において、ナノファイバーに関する特許出願動向を調査し、その実態を明らかにしました(特許庁による調査レポートの概要(PDF形式)はこちら)。本調査の主要部分を本稿で紹介します。

 ナノファイバーにおける技術俯瞰図を図1に示します。本調査では、特に直径が1μm未満でアスペクト比が100以上のもの、および「ナノファイバー」であることが明記されているものを対象としました。本調査における主要な対象技術分野は、ナノファイバーに関する原料、製造、加工、用途分野です。また、原料に応じて「天然高分子系」、「炭素系」、「合成高分子系」に大別し、場合により上記種類別にデータを示しています。なお、本調査においては、金属やセラミックスからなるナノファイバーは調査対象外としています。

図1 技術俯瞰図
図1 技術俯瞰図
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