繊維強化プラスチックは、ガラス繊維や炭素繊維などの繊維をプラスチックの中に入れて強度を向上させた複合材料であり、安価で軽量性や耐久性が良いことから、種々の構造材料として使用されている。さらに、近年、繊維強化プラスチックを用いる対象は拡大し、特に、航空機、自動車への適用のための繊維強化プラスチックの技術開発が活発に行われてきており、日米欧において特許出願が急増している。 日本の個々の企業はそれぞれ高い技術開発力を有しているが、国際競争力をさらに高めるためには、容易にまねのできないハイパフォーマンスな材料開発が重要となる。また、高い技術力を有する各企業が協調して、原料、中間体、成形加工の製造工程全体にまたがる量産化システムの強化や、信頼性の向上に寄与する国際標準規格の開発も重要となる。

 繊維強化プラスチック(Fiber-Reinforced Plastics(FRP))は、ガラス繊維などの繊維をプラスチックの中に入れて強度を向上させた複合材料のことです。プラスチックは軽量ではありますが、弾性率が低く構造用材料としては余り適していません。そこで、ガラス繊維のように弾性率の高い材料との複合材料とすることで、軽量で強度の高い、比強度の大きな材料として用いられています。こうした繊維強化プラスチックにおいて、強化される側の部材を母材(マトリックス)と呼び、繊維強化プラスチックの場合はプラスチックがマトリックスとなります。

 繊維強化プラスチックの製造に当たっては、最終製品の形状、要求性能、組み合わせる樹脂の種類、目標コストに応じて、組み合わせる中間材料の種類や、後述するオートクレーブ、プレス成形、フィラメントワインディング、プルトルージョン、RTM成形、射出成形等の多岐にわたる成形方法から最も適したものを選択する必要があります。さらに、連続繊維の繊維強化プラスチックは繊維方向と繊維の直角方向では物性が全く異なる異方性を有し、最終製品で必要となる性能を得るためには、繊維の並べ方・含有量、組み合わせる樹脂の選択など、材料の物性設計が必要となります。

 繊維強化プラスチックは安価で軽量性や耐久性が良いことから、応用分野として、小型船舶の船体や、自動車・鉄道車両の内外装、ユニットバスや浄化槽などの住宅設備機器で主に使用されています。

 本調査に関連する要素技術、技術分野、応用産業の概要をまとめた技術俯瞰図を図1に示しました。本調査での主要な対象技術分野は、以下のとおりです。

 繊維強化プラスチック(以下の要素技術を含む)
[1]繊維強化プラスチック(炭素繊維、ガラス繊維等)
[2]自動車用、航空機用、産業機器用のもの
[3]繊維強化プラスチックの成形技術
[4]繊維強化プラスチックの組合せ、接合技術

図1 繊維強化プラスチック関連技術の技術俯瞰図
図1 繊維強化プラスチック関連技術の技術俯瞰図
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