日本の農業は、地域経済や食料の安定供給、国土保全などで重要な役割を担っていますが、農業従事者の減少・高齢化等の問題に直面しています。一方で、ライフスタイルの変化、世界の食市場の拡大、ITによる農業技術の向上などにより、農業には若者たちを引きつけるアグリイノベーションを実現する絶好のチャンスが訪れています。

 世界的には、気候変動や人口増加が進む中、世界の食料・水・資源の持続的な供給が世界共通の課題となっています。そのような課題を解決する手段として、ゲノム情報を活用した品種開発が新興国を含めて急速に進展しており、その基本技術の多くは欧米が主導する状況となっています。特許庁は「平成26年度特許出願技術動向調査」において、農業関連技術に関する特許出願動向や研究開発動向、そして市場環境などを調査し、その実態を明らかにしました(特許庁による調査レポートの概要(PDF形式)はこちら)。同調査の主要部分を本稿で紹介します。

 本調査では、農業関連技術を大きく栽培技術と育種技術に分類しました(図1)。栽培技術には、スマート農業注1)と、植物工場の一部としてファインバブル注2)やLEDを用いた光による栄養成分などの制御技術を含めました。

注1)ロボット技術やICT、GPSなどの先端技術を活用し、超省力化や高品質生産などを可能にする新たな農業。
注2)100μm以下の微細な気泡を扱う技術で、バブル発生時の活性酸素などによる滅菌や水質浄化などを行う。

 育種技術にはゲノム編集技術などのNew Plant Breeding Techniques (NBT、自然界で生じる突然変異や交配による組み替えと区別がつかない作物を生み出す技術) やマーカー利用選抜注3)などのゲノム育種を中心とした新しい育種技術を含めました。

注3)ゲノム上にある優良形質を決定している遺伝子(群)およびその周辺のDNA塩基配列を目印(マーカー)として選抜育種を実施する手法。

図1 技術俯瞰図
図1 技術俯瞰図
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