自動車エンジンの燃焼技術では、エンジン熱効率の向上、CO2削減技術、排出ガス規制への対応など、様々な課題があります。それらの課題に対応するために、電気自動車や水素自動車などの次世代自動車が開発され、実用化のための研究開発もなされてきています。しかしながら、JEITA(電子情報技術産業協会)による予測によれば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンを搭載した自動車の生産台数は2017年でも95%を超え、次世代自動車の生産台数は5%にも満たない状況です。すなわち、自動車エンジン燃焼技術では引き続き、エンジン熱効率の向上、CO2削減、排出ガス規制への対応などの技術開発がますます重要となってきています。

 特許庁は「平成26年度特許出願技術動向調査」において、自動車エンジン燃焼技術に関する国内外の特許出願動向や研究開発動向、市場環境や政策動向を調査し、今後日本が目指すべき研究開発、技術開発の方向性を示しました(特許庁による調査レポートの概要(PDF形式)はこちら)。同調査の主要部分を本稿で紹介します。

 図1に本調査の技術俯瞰図を示します。本調査における「自動車エンジンの燃焼技術」の調査対象は、「燃焼技術」と「燃焼によって排気成分を低減する技術」に分けられます。「燃焼技術」は、燃焼制御技術、燃料噴射装置、吸気系装置、点火系装置、燃焼室およびその周辺要素(ピストンやシリンダブロック、シリンダヘッドなど)、モデル技術、燃焼の形態(希薄燃焼、HCCI燃焼など)、特殊な機関型式(可変圧縮比機関など)に分けられます。「燃焼によって排気成分を低減する技術」は、燃焼によって、NOxを低減する技術、COやHCを低減する技術、PMを低減する技術、SOxを低減する技術に分けられます。本調査では、ガソリンと軽油以外の燃料は調査対象範囲外としています。また、触媒などを用いた排気浄化制御に関しても、調査対象外としています。

図1 自動車エンジンの燃焼技術の技術俯瞰図
図1 自動車エンジンの燃焼技術の技術俯瞰図
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