GPSに代表される衛星測位システムは現在、社会インフラとして必要不可欠なものである。今後はさらに、M2M(Machine to Machine)やIoT(Internet of Things)など、位置・時間を利用するサービスの発展を支えるものとして、衛星測位システムに対する期待は一層高まっている。同システムに関する特許出願状況をみると、日本は「準天頂衛星システム」での技術蓄積がある一方、その出願の多くは日米欧にとどまり、今後GNSS(Global Navigation Satellite System)市場が活発化すると見込まれるアジア・オセアニアへの出願は他国に遅れをとっている。このような日本の状況を変えるためには、産学官連携のもとアジア・オセアニア市場での浸透/シェア拡大を確実なものにしていくことが重要である。

 衛星測位システムは、衛星から送信される信号を利用して物体の位置を測定し、位置情報以外にも移動速度、方向、姿勢などを算出するものです。衛星を用いることで、信号を送信する設備を地上に設けられないような場所であっても、全地球的な測位を行うことができるため、GNSS(Global Navigation Satellite System:全地球的衛星測位システム)とも呼ばれます。現在、日本を含む世界の国や地域でGNSSの開発およびシステム構築が進められています。特に近年は、携帯電話機やスマートフォン、タブレット端末、また、スマートウォッチなどのウエアラブル機器が急速に普及しています。これらのデバイスにはGPS(Global Positioning System)に代表される衛星測位システムが搭載されており、デバイスの位置情報を知ることが可能です。また、カーナビゲーションのみならず、交通機関の運行情報、ゲームなど、デバイスの位置情報を用いたサービスが増えてきました。

 ここで、今後のGNSSデバイスの導入数の予測を見てみると、いずれの地域においても年々導入数が増加していき、2023年には2013年のおよそ3倍のGNSSデバイスが市場投入されると見込まれ、今後も拡大が期待されています(図1)。特に、アジア・オセアニア地域においては、他の地域よりも導入数の増加量が大きく、市場の活性化が最も期待される地域であると考えられます。

図1 GNSSデバイスの地域別導入数
図1 GNSSデバイスの地域別導入数
出典:「GNSS市場報告 ISSUE4」、 European Global Satellite Navigation System Agency