来たるべきIoT(Internet of Things)を活用する社会では、サイバー空間での新しい攻撃や脅威・リスクが高くなることが懸念されている。この懸念を払拭するために必要なのが、情報セキュリティ技術である。同技術に関する特許出願状況を見ると、日本は暗号技術などは強い一方で、ウイルス・マルウェア検知などについては海外の出願人に対して優位なポジションを獲得しているとは言えない。こうした日本の状況を変えていくには、規制緩和などによって、ウイルス・マルウェア検知技術の研究開発にインセンティブを付与していく必要がある。

 サイバー空間は、陸海空宇宙に次ぐ第5の戦場であるといわれています。しかし、現状の日本は、この戦場で生き残っていけるだけの備えが万端であるとは言い切れません。国内の情報セキュリティ市場においては、世界市場同様、米国に本社を構えるベンダーのシェアが高くなっています。情報セキュリティの分野において、コアとなる重要製品・サービス・技術が海外製品となり、国内技術が空洞化した場合、抜本的な解決策や対策を措置できなくなる危険性があります。従って、日本にとっての課題は、セキュリティチップや暗号技術、認証技術といったコアとなり得る重要製品・技術や、不正ログイン検知、ログ解析、マルウェア検知などの最新の重要製品・技術を押さえ、早期に国際競争力のあるものにしていくことであるといえます。

 情報セキュリティ分野はとても有望な市場です。同分野の世界市場は、2011~2017年に年平均成長率(CAGR)11.3%で成長すると見られており、今後も拡大が期待されています(図1)。日本の国際競争力が高まることで、日本企業などの事業規模が大きく拡大するものと考えられます。

図1 情報セキュリティ技術分野の世界市場推移(出典:Alix Partners Web site)
図1 情報セキュリティ技術分野の世界市場推移(出典:Alix Partners Web site)
情報セキュリティ技術分野の世界市場は、2015年の段階で北米(North America)が全体の37%、西欧(West Europe)が全体の23.7%を占めている。
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 このような背景の下、特許庁は「平成27年度特許出願技術動向調査」において、情報セキュリティ技術に関する特許出願動向を調査し、その実態を明らかにしました(特許庁による調査レポートの概要(PDF形式)はこちら)。本調査の主要部分を本稿で紹介します。