近年、航空機・宇宙機器産業は、国内で開発されている小型航空機や、世界中で利用されているGPSなどで、その動向が注視されている。同産業で日本が活躍する余地は大きいと考えられるが、特許出願件数等の観点では日本企業は欧米系の企業と比較して遅れを取っている。そのような現状を打破していくために、航空機分野においては、材料関連技術といった日本にも技術の蓄積がある領域を中心に、国内の産業を大きくしていく必要がある。一方、宇宙機器分野については、他国の特許出願動向を注視しながら、市場規模の大きな国や、日本企業がサービス提供を想定する国などへの特許出願を増加させることが必要だ。

 我が国の民間の航空機産業はこれまで軍需を通じて技術を獲得、向上させ、機体やエンジンの国際共同開発などを通じて1980年代から大きく発展してきました。今後は、世界的な増産および国産旅客機の量産開始により、大幅な売り上げ増が見込まれています。また、日本の宇宙産業もこれらの民生利用の活発化を受けて、宇宙活動法案の検討やリモートセンシング法案の検討に入るなど、近年の宇宙産業は産業の転換期に入っており、今後の動向に注目が集まっています。

 このような背景の下、特許庁は「平成27年度特許出願技術動向調査」において、航空機・宇宙機器関連技術に関する特許出願動向を調査し、航空機の材料関連や宇宙分野の利活用関連といった技術に日本の強みがあることなど、その実態を明らかにしました(特許庁による調査レポートの概要(PDF形式)はこちら)。同調査の主要部分を本稿で紹介します。

 本調査の技術俯瞰図を示します。本調査において、「航空機・宇宙機器関連技術」は、「航空機」、「人工衛星関連機器」、「ロケット関連機器」の技術区分から構成されています(図1)。

図1 技術俯瞰図
図1 技術俯瞰図
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 航空機およびロケット関連機器については、「空力技術」、「エンジン要素技術」、「機体関連技術」、「装備品(システム、内装品)技術」、「材料・構造技術」、「インテグレーション技術」、の技術区分から構成されています。人工衛星関連機器については、「機体関連技術」、「装備品(システム、内装品)技術」、「材料・構造技術」、「インテグレーション技術」、の技術区分から構成されています。さらに各技術に共通する要素として、「地上システム・データ利用」および「試験環境・設備」、また航空機、人工衛星関連機器、ロケット関連機器に共通する項目として「課題」と「適用領域・用途」に関する技術区分を設定しています(図1)。