エアコンの巨大市場が形成された中国。中国企業のシェアは高まり、勢力を拡大しつつある。だが、中国市場でこれから求められるエアコンの機器更新時に必要となる技術については、まだそれほど特許が出願されていない。そのため、日本企業は今後の中国市場における傾向の変化を見据え、更新需要に対応した技術の開発・出願を行っていくことが重要である。

 空気調和機(エアコン)は、温度、湿度、気流、清浄度などを調整する機器であり、消費電力の低減、地球温暖化係数の低い冷媒への転換、多機能化などを目的として積極的な技術開発が行われています。この空気調和機の分野において、日本企業は高い技術力を背景に売上を伸ばし、2010年にはダイキン工業が米キヤリア社を抜いて売上高世界1位になるなど、躍進を続けてきました。その一方で、世界市場における台数ベースでのシェアでは中国企業が上位を占めるなど、中国企業も着実に勢力を拡大しており、今後の動向が注目されています。

 特許庁は「平成26年度特許出願技術動向調査」において、中国国内における空気調和機の特許出願動向などを調査し、当該技術の現状を明らかにしました(特許庁による調査レポートの概要(PDF形式)はこちら)。この調査により、中国籍の出願人によって主に中国の国内事情に合わせた積極的な出願がなされている技術、出願が手薄な技術が明らかとなりました。同調査の主要部分を本稿で紹介します。

 図1に本調査の調査対象を示します。空気調和機には様々な種類がありますが、本調査では、家庭用の空気調和機(ルームエアコン(RAC:Room Air Conditioner))と、オフィスや店舗などで用いられる業務用の空気調和機(パッケージエアコン(PAC:Packaged Air Conditioner))を主な調査対象としました。

図1 調査対象
図1 調査対象
出典:特開2012-42182号公報、特開2012-32048号公報、特開平7-260203号公報、特開2013-204833号公報
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