パワー半導体デバイスは、我が国の強みである。この分野では今、中国が急速に力を伸ばしてきている。日本がこの分野で高い競争力を誇示していくためには、SiCやGaN、アセンブリーといったキーテクノロジーの研究開発に注力して日本の優位性を保つこと、さらにはハイエンドIGBTの製品開発に移行してMOSFETの分野での価格競争に巻き込まれないようすることが重要である。

 パワー半導体デバイスとは電力の変換や供給を行うための半導体素子で、自動車や鉄道といった産業機器からエアコンや冷蔵庫などの民生機器まで幅広く用いられています。経済発展の著しい中国では、エネルギー需要拡大への対応が急務であり、パワー半導体デバイスの一大消費国となっています。そのため、日本、米国、欧州のパワー半導体デバイスメーカーが中国へ進出するとともに、中国内のメーカーも急成長を遂げ、各国のメーカーによる開発競争が激化しています。その結果、中国ではパワー半導体デバイスに関する技術の特許出願が急増しています。

 こうした背景のもと、特許庁は「平成26年度特許出願技術動向調査」において、パワー半導体デバイスに関する中国特許の出願動向を調査・分析し、中国で事業を行う世界各国の半導体メーカーの実態を明らかにしました(特許庁による調査レポートの概要(PDF形式)はこちら)。同調査の主要部分を本稿で紹介します。

 図1に本調査の技術俯瞰図を示します。本調査では、パワー半導体デバイスに関連する技術を、まず(1)基板の材料、(2)素子の種類、(3)製造プロセスの観点で大別し、それぞれの観点についてさらに詳細な技術区分を設けました。

図1 技術俯瞰図
図1 技術俯瞰図
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