日本の25倍の広大な耕地面積(9億6000万ヘクタール)を有して13億人を超える人口を抱える中国では、近年、農業の機械化が急速に進んでいます。収穫・脱穀機をはじめとする農業機械の市場規模が拡大傾向にある中で、日本の農機メーカー各社も中国市場への参入を本格化させています。

 現在の中国市場において、「自脱型コンバイン」(詳細は後述)などの稲作用機械については日本企業が比較的大きなシェアを握っていますが、「汎用コンバイン」やトウモロコシ収穫機などの畑作用機械については、欧米農機メーカーの参入や中国現地企業の台頭により、日本企業はいまだ十分なシェアを確保するに至っていません。特許庁は「平成26年度特許出願技術動向調査」において、特に中国における収穫・脱穀機に関する特許出願動向等を調査し、その実態を明らかにしました(特許庁による調査レポートの概要(PDF形式)はこちら)。同調査の主要部分を本稿で紹介します。

 図1に本調査の技術俯瞰図を示します。収穫・脱穀機の技術を、(1)穀物の収穫機、脱穀機、(2)根菜類および他の地下作物の掘取収穫機、(3)その他の作物の収穫機、そして(4)芝刈機、草刈機、牧草収穫機の4つに大別しました。さらに、これら4つの区分に共通する技術、共通の目的・課題についても取り上げました。

 穀物の収穫機、脱穀機の代表的な機械として、コンバインが挙げられます。コンバインは刈り取りから脱穀までを連続して行う機械であり、自脱型コンバインと汎用(普通型)コンバインの2種類があります。自脱型コンバインは日本で発達したコンバインであり、水稲の収穫・脱穀に特化しています。一方、汎用(普通型)コンバインは、日本のほか欧米でも普及しているものであり、米、麦に限らず他の農作物(例えばトウモロコシなど)にも適用できます。

図1 収穫・脱穀機の技術俯瞰図
図1 収穫・脱穀機の技術俯瞰図
[画像のクリックで拡大表示]