スマートフォンを中心とする情報端末の分野において、中国は、市場としても生産拠点としても存在感を増している。日本は、情報端末の部材のうち、ディスプレイやタッチパネルの出願件数で他国をリードしていたが、近年、韓国・中国の出願件数が急速に増加している。日本は、技術の蓄積のあるこれらの部材に引き続き注力すると共に、最終製品でも市場シェアを確保するために、全く新しいユーザ体験を提供する端末やその部材の技術開発を進めることが期待される。

 スマートフォン、フィーチャーフォン、タブレット、ノートPCといった情報端末は、現在、大きな市場を形成しており、今後もスマートフォンを中心に市場の拡大が予測されています(図1)。

  2014年の情報端末の地域別需要台数を見ると、中国が25%で最大となっており、次いでアジアが24%、欧州が18%、北米が13%となっています(図2左)。また、地域別生産台数は、中国が72%であり、圧倒的な割合を占めています(図2右)。このように中国が情報端末の市場としても生産拠点としても大きな割合を占めるようになっており、日本企業が中国を意識した事業展開をするためには、中国における技術動向を調査・分析し、技術競争力の現状と今後の展望について検討していく必要があると考えられます。

図1 情報端末の市場規模(生産台数)
図1 情報端末の市場規模(生産台数)
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図2 地域別の情報端末需要台数と生産台数(2014年)
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図2 地域別の情報端末需要台数と生産台数(2014年)
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図2 地域別の情報端末需要台数と生産台数(2014年)
(出典:富士キメラ総研、2015 ワールドワイドエレクトロニクス市場総調査、2015年3月、をもとに作成)

 このような背景の下、特許庁は「平成27年度特許出願技術動向調査」において、情報端末の筐(きょう)体・ユーザインターフェースのハードウェアに関する技術の中国国内における特許出願動向などを調査し、その実態を明らかにしました(特許庁による調査レポートの概要(PDF形式)こちら)。ここで、本調査における情報端末とは、具体的には、スマートフォン、タブレット、ノートPC、ウェアラブル端末などです。また、ユーザインターフェースのハードウェアとは、キーボードやマウスなどの入力装置、ディスプレイやスピーカなどの出力装置を指します。本調査の主要部分を本稿で紹介します。

 図3に本調査の技術俯瞰図を示します。本調査では、図3に示す観点、すなわち、適用対象、課題、構造・製法・材料などの特徴、部品の観点で特許出願や実用新案登録を分類しました。

図3 技術俯瞰図
図3 技術俯瞰図
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