自動車向けに「ワイヤーハーネス」を製造する日本のメーカーは、拡大する中国市場で積極的に事業展開している。ワイヤーハーネスに関する特許出願件数を見ると、日本は幅広い技術で他国を上回っている。今後、中国での事業拡大のためには、中国で重視される低コスト化に関連する固定具・保護具の技術や、自動車の高機能化を見据えた端子・コネクタ・ジャンクションボックスの技術の両方をおろそかにせずに技術開発を進めることが鍵となると考えられる。

 ワイヤーハーネスは、自動車の電源供給や信号通信に使用される複数の電線を束にした集合部品です。今後、中国や新興国において、自動車生産が増加すると見込まれるため、ワイヤーハーネスの市場規模も増加すると予測されています(図1)。

図1 ワイヤーハーネス市場規模(数量)の推移
図1 ワイヤーハーネス市場規模(数量)の推移
注:富士キメラ総研「2014ワールドワイド自動車部品マーケティング便覧」のデータを基にJFEテクノリサーチが作成

 日本企業は、世界市場の50%以上のシェアを占め、中国へも積極的に事業展開をしており、中国への特許出願も急増させていますが、一方で、中国現地企業による出願も急増しています。今後、日本企業が中国市場で優位性を確保するためには、中国におけるワイヤーハーネスの技術動向を調査・分析し、技術競争力の現状と今後の展望について検討していく必要があると考えられます。

 このような背景の下、特許庁は「平成27年度特許出願技術動向調査」において、中国国内におけるワイヤーハーネスの特許出願動向などを調査し、その実態を明らかにしました(特許庁による調査レポートの概要(PDF形式)こちら)。本調査の主要部分を本稿で紹介します。

 図2に本調査の技術俯瞰図を示します。ワイヤーハーネスの主要な構成部品としては、電線、コネクタ(端子)、ジャンクションボックス(電線同士を結合、分岐、中継する際に使用する端子の保護箱)、保護具(コネクタおよび電線を包むもの)、固定具(電線や保護具を車体に固定するもの)があります。

  また、ワイヤーハーネスに求められるものとしては、故障なく長期に使用できる高信頼性や低コストなどがあります。今後は、燃費向上、情報化対応、ハイブリッド自動車や電気自動車などへの対応も重要になると考えられます。

  本調査では、図2に示す観点、すなわち、課題、構成要素、組み立て・設計、検査・評価などの観点で特許出願や実用新案登録を分類しました。

図 2 技術俯瞰図
図 2 技術俯瞰図
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