今もなお、IoT(Internet of Things)ブームに沸き立つ米国シリコンバレー。彼の地では、IoTに関連したスタートアップが次々と生まれています。

 現在、インターネットにつながるセンサーが増え、世の中に膨大な「センシングデータ」があふれるようになりました。このセンシングビッグデータをビジネスにつなげようと、シリコンバレーに限らず世界中の企業が動き始めています。しかし、非常に速いスピードで進んでいくシリコンバレーに対し、日本企業はどのフィールドで戦えばいいのか悩んでいるように見受けられます。

 そこで今回は、日本企業が狙うべきIoTの市場についてこの分野の第一人者である東京大学先端科学技術研究センター教授の森川博之氏にお話を伺います。
森川博之(もりかわ・ひろゆき)氏
森川博之(もりかわ・ひろゆき)氏
東京大学先端科学技術研究センター教授。1992年3月同大学大学院工学系研究科博士課程修了。2007年4月より現職。「ビッグデータ時代の情報ネットワーク社会はどうあるべきか」「情報通信技術(ICT)はどのように将来の社会を変えるのか」といった点について明確な指針を示すべく、「社会基盤としてのICT」「エクスペリエンスとしてのICT」という2つの視点から、ビッグデータ/M2M/モノのインターネット、センサーネットワーク、モバイル/無線通信システムなどの研究に取り組んでいる。新世代M2Mコンソーシアム会長。
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大田 森川先生は、以前にGoogle社がサーモスタットのメーカーであるNest Labs社(以下、Nest社)を買収したとき、「これはGoogle社がセンシングデータのビジネスを仕掛けてこようとしているのではないか」と話されていました。実際、Google社は、家の中やその周辺のアプリケーションを中心に企業買収を仕掛けていますが、具体的にどのような狙いがあるのでしょうか。

森川 それは、まだはっきりとは分かりません。とはいえ、Google社がインターネット上だけではなく、世の中のリアルなデータを集めようとしているのは明白です。

 もともとスマートグリットという分野で見れば、Nest社はお金になりそうな企業だと思っていました。むしろ私が驚いたのは、32億米ドルという高額な買収金額です。その次にショックだったのは、Nest社のサーモスタットが家庭におけるIoTのハブになり始めていたことです。クルマ、家電、照明など家を取り巻くあらゆるモノがこのサーモスタットとつながり始めています。サーモスタットがハブになる。言われてみれば納得するのですが、我々が考え及ばなかったことをやられたなという感じです。