皆さま、こんにちは。キュア・アップの佐竹晃太です。

 前回は、コーチングアプリを手掛けている米Vida Health社が、製薬企業の英AstraZeneca社とアライアンスを結んだというトピックをご紹介しました。まだお読みになっていない方は、ぜひこちらもご覧ください。

モバイルヘルス企業と製薬企業のタッグに注目

 さて、つい先日シリコンバレーに足を運んだのですが、米国でのデジタルヘルス業界はますます勢い付いています。数多くのデジタルヘルスベンチャーが立ち上がり、続々と新製品が生まれ、他業界からの注目度も非常に高まっています。

 日本においても参考にできる話題が多々ありますので、今回も引き続き、モバイルヘルスと他業界のアライアンス事例を紹介したいと思います。

 米国で初めて2型糖尿病患者に対する「処方アプリ」をリリースした米WellDoc社が、AADE(アメリカ糖尿病教育者協会)とアライアンスを組んだ、「モバイルヘルス×アカデミア」の事例です。

医薬品と同じビジネスモデルの「BlueStar」」

 今回取り上げるWellDoc社は、2型糖尿病患者向けアプリ「BlueStar」」を開発しています。モバイルヘルス業界では先駆的存在なので、ご存じの方もいらっしゃるかもしれません。

BlueStarのWebサイトから
BlueStarのWebサイトから

 BlueStarは、患者が自宅で血糖値を入力する「記録」という機能にとどまらず、入力情報をもとに、適切なタイミングで疾患指導や生活習慣・モチベーション維持に関するアドバイスが表示されます。その他、アプリ上で専門家に質問することができますし、薬物療法や食事療法、運動療法といった血糖コントロールの方法を「学習」することもできます。

 また、医師向けには診断サポートシステムも提供されているのですが、毎回の診察前に血糖値や服薬・体調の記録、進行状況のレポートが医療チームに送られるため、「情報共有」という役割も担っています。つまり、患者が疾患管理や疾患学習をできるだけでなく、医療者と双方向に情報共有できるシステムなのです。

 BlueStarは、大規模な臨床試験において糖尿病新薬などの医薬品と同等以上の効果があったという結果が示され、2010年にはFDA(アメリカ食品医薬品局)からの承認も受けています。FDAは、米国保健福祉省配下の政府機関で、日本でいうところの厚生労働省のようなものです。FDAに承認されるということは、医療ガイダンスアプリとしての妥当性がオフィシャルに認められたということです。通常の医薬品と同じように、BlueStarは医師によって処方されます。

 また、FDAから承認されたことによって、BlueStarは複数の大手保険会社から「保険適用」とされています。つまり、医薬品と同じビジネスモデルが医療アプリでも実用化されているのです。