ひょんころビジネスとは…
新事業に計画は欠かせない。だが、計画通りに進む新事業など皆無。むしろ、ひょんなことから思わぬ方向に転がり、成長するものがほとんどではないか。そんなビジネスを「ひょんころビジネス」と名付けてみた。
東京大学大学院工学系研究科機械工学 専攻特任教授で、トライポッド・ デザインCEOの中川聰氏。
東京大学大学院工学系研究科機械工学 専攻特任教授で、トライポッド・ デザインCEOの中川聰氏。

 2014年の夏。ユニバーサルデザインの研究者として名高い中川聰氏は、センサーテクノロジーのありがたさを身をもって体験した。ある夜、体調が急変し、訪れた病院で、予期せぬ心臓の異変を告げられる。検査後、心臓の形成手術を施すため、人工心肺を使い4時間もの間、自らの心肺を停止させ、心臓弁膜手術を受けたのである。

 この九死に一生を得る経験は、彼にとって様々なセンサーが彼自身の生命維持とその後の暮らしのあり方に大きく寄与貢献していることを実感する貴重な機会となった。現在では、ウェアラブルの心拍計や、体内に埋め込んだ人工弁監視のセンサーのおかげで体調も以前に増して健康な状態に完全回復した。

 この一連の体験を通して、急速な技術進化を遂げたセンサーに強い関心を抱き、それらの技術をより広く活用して人類の豊かな未来に貢献できる新たな産業創造を支援したいという強い想いを抱くに至ったという。この思いを形にすべくセンシングの産業化を担う「SUPER SENSING FORUM(仮称)」を2016年1月にも設立する。同氏に、フォーラムの狙いを聞いた。

(聞き手は中道 理)