設立から96年という歴史を持つ世界的な建設機械メーカーのコマツが、オープンイノベーションという新しい取り組みで成果を上げている。ICT(情報通信技術)と建機を融合した「スマートコンストラクション」は、その代表例だ。コマツでオープンイノベーション活動を推進するCTO室 技術イノベーション企画部の冨樫良一部長に、“開社”の極意を聞いた。(聞き手は中道 理、田中直樹)
――コマツのオープンイノベーションを推進する部署のリーダーとして、何が重要だと考えていますか。
コマツがやりたいことをハッキリさせること。今やりたいこと、将来やりたいことを明確に示すことです。
コマツは96年もの歴史を持っている会社ですので、コア技術はあります。なので、やりたいことをハッキリさせて、それを自社でやるのがいいのか、外部でやるのがいいのかを決めます。やりたいことが明確になれば、外部にお願いしなければいけないことは明確になるんです。
舞台は日本も含めて世界中です。オープンイノベーションで一緒に取り組む相手は誰かというと、研究機関の場合もありますし、スタートアップ企業の場合もあります。今から新しいことをする場合は、大学もパートナーになり得ます。
――コマツは建設機械の事業が中心です。この分野で社外と連携し、ICTで建機と人や作業現場をつなぎ、安全性や生産性を高める「スマートコンストラクション」という活動をしています。例えば、経験の浅いオペレーターでも安全かつ高精度に施工できる“ICT建機”を開発したり、導入したりしていますね。
スマートコンストラクションは、コマツのオープンイノベーションのほんの一部に過ぎません。
我々の売上高は約2兆円で、その9割が建設・鉱山機械事業です。その中で、一般建機のお客様の現場(コンストラクション)でビジネスイノベーションを起こそうとして取り組んでいるのがスマートコンストラクションです。
この他、コンストラクションよりも大型の機械が活躍する鉱山機械分野においてもオープンイノベーションに取り組んでいます。
さらに、林業機械や農業土木の分野もオープンイノベーションの対象にしています。これらの分野は本当にオープンイノベーションの宝庫です。コンストラクション以外の分野も、非常に大きな可能性があります。