誰がやっても失敗しない家庭用キットを開発

 同社の製品は、こうしたアクアポニックスの家庭向け設備キットだ。水槽の上にハイドロボールを使った水耕栽培のプランターを載せた形になっている。循環ポンプを使って水槽の水をプランターに上げ、あふれた水が自動的に水槽に戻る仕組みを採る。アンモニアを硝酸塩に変えるバクテリアは添加するのではなく、3~5週間”わいてくるのを待つ”だけ。この間、魚は元気がなく、植物は育たないという厳しい状況になるが、家庭用なら待てると判断したという。

水耕栽培にはハイドロボールを使う。育てる魚には丈夫な「金魚」を推奨している。水槽の中央部の人工水草で隠しているのが水槽の水を水耕栽培部分に送る循環ポンプ。あふれた水は左右から水槽に戻る仕組み。「週1回の水補充(蒸発分)」「毎日の魚のエサやり」さえできれば育てられるというお手軽さも売りの1つ。
水耕栽培にはハイドロボールを使う。育てる魚には丈夫な「金魚」を推奨している。水槽の中央部の人工水草で隠しているのが水槽の水を水耕栽培部分に送る循環ポンプ。あふれた水は左右から水槽に戻る仕組み。「週1回の水補充(蒸発分)」「毎日の魚のエサやり」さえできれば育てられるというお手軽さも売りの1つ。
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 同社がこうしたキットの開発・販売に踏み切ったのは、「アクアポニックスの基本構造は簡単なものの、DIYや市販のキットではうまくいかないものが多かったから」(濱田氏)。魚、バクテリア、植物の3者にとっての最適解になる水量、循環量、循環スピードのバランスを取らなければならないので、意外にノウハウが必要になるという。例えば同社の製品では、水耕栽培に直接水(養液)を使うのではなく、粘土を高温焼結したハイドロボールを採用している。これは、ハイドロボールは無数の小さな穴の部分にバクテリアが生息でき、バクテリアの状態が安定しやすいため。循環を確実に行うために、エアレーション用ポンプと循環ポンプは別にした。こうした工夫を施すことで、誰がやっても失敗しないキットを作り上げた。

 といっても、おうち菜園創業者2人は農業や養殖にそれほど深い経験を持つわけではない。そこで協力を仰いだのが、アクアポニックスキットの開発を目指していた米AquaSprouts社、第一人者の著書を扱うなどアクアポニックスのノウハウを持つ米Aquaponic Source社である。「アクアポニックスは知っている人が少ないからこそ人が集まりやすく、コミュニティはできやすい」(同社広報の江里祥和氏)。コミュニティの力を生かして3社で共同開発を行い、シンプルでありながらバランスを保つ仕組みを実装した。

DIYによるアクアポニックスの例。同社ではDIY用マニュアルも販売する。魚を“見せる”形になっていないが、基本的な仕組みは販売する家庭用キットと同じ。
DIYによるアクアポニックスの例。同社ではDIY用マニュアルも販売する。魚を“見せる”形になっていないが、基本的な仕組みは販売する家庭用キットと同じ。
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