「熱の可視化」にも力を注ぐ

――標準化にも取り組んでいる。

 これまで熱物性測定の世界では、同じ物性値を測定しているのに装置によって測定結果が異なるということが決して珍しくなかった。厳密にそれぞれの測定原理・装置に最適化すれば結果の差異は縮小するが、使う側が測定装置に合わせ込まなければならない手間がかかるので、やはり使いにくい。つまり、装置メーカーごとに“ものさし”は存在しているものの、そのものさしがすべてバラバラだったわけである。それでは業界全体として信頼を得られないし、熱物性測定の市場も拡大しない。

 そこで、我々がTA3Xシリーズで実現した面内方向の熱物性測定については、経済産業省の「新市場創造型標準化制度」を活用し、標準化を目指すことにした。2017年夏ごろに国内規格(JIS)が制定される見通しで、将来は国際規格(ISO)も視野に入れている。

――今後の展望を教えてほしい。

 現在は、中赤外線カメラを用いた「熱の可視化」の開発を進めている。素材の熱物性だけではなく、素材の構造も見えるようになると期待している。既存のX線測定装置などでは難しかった複合材の分析などに使えると見通しを立てている。この分野では名古屋大学との共同研究や、同大学のNCC次世代複合材研究会との連携で実現速度を高めるべく活動している。

 熱物性測定事業への参入にしても、標準化にしても周囲の人に恵まれたという点が非常に大きかったと思う。その意味では早く恩返しすることと、今後も人と人との縁を大事にして事業を進めていきたい。

 個人的に注目しているのはIoT(モノのインターネット)だ。熱物性測定のサービスをIoTにどう絡めていけるのか、試行錯誤している。

関根 誠(せきね・まこと)
ベテル ハドソン研究所 所長
関根 誠(せきね・まこと) 1975年茨城県笠間市生まれ。富山大学工学部卒業後、医療機器メーカー、産業技術総合研究所を経て現職。もともとの基本スキルは製品開発・機械設計。「仕事は楽しく!」をモットーに、「熱物性」を軸にしながら、異分野異業種との交流を通じ、新しい熱物性の価値を探索・創造する日々。(写真:加藤 康)