「世界の工場」と初めて呼ばれたのは、18世紀後半から19世紀にかけて産業革命を起こした英国でした。20世紀になると米国、日本が相次いで世界の工場となり、21世紀の現在、そのポジションには中国が君臨しています。

 英国、米国、日本は量産技術のイノベーションによって世界の工場となりましたが、中国が成長した最大の原動力は安価な労働力でした。しかし、中国の労働力はもはや安価ではありません。日本貿易振興機構(ジェトロ)のデータによると、東南アジア諸国の賃金コストは中国より30~60%低くなっています()。

表●アジア各国主要都市の一般工職月額賃金比較(2015)
表●アジア各国主要都市の一般工職月額賃金比較(2015)
出所:日本貿易振興機構(ジェトロ)
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 中国は「低賃金による低生産コスト」という特長を失いつつあり、今後は、台湾や韓国の産業モデルに接近していかざるを得なくなりました。つまり、海外ユーザーからの指導に基づく安価なモノづくりから脱却し、高度な技術力や品質を備えたワールドクラスの工場となることが求められているのです。

 この新しい産業モデルを支え、その付加価値の源泉とすべく、中国が国をあげて育成しているのが、半導体サプライチェーンだといえるでしょう。