「国際半導体技術ロードマップ(ITRS: International Technology Roadmap for Semiconductors)」を策定していたITRS委員会が活動を終えました。最終的な確認はまだできていませんが、2016年5月に最終版のロードマップが発表されたとのことです。活動終了の背景には、半導体業界の大きな構造変化があるわけですが、SEMI会員にとって、ロードマップ、あるいは技術目標のコンセンサスが失われることは、大きな損失であると言わざるを得ません。

 このロードマップの前身は、1993年に米国半導体工業会(SIA)がとりまとめた「National Technology Roadmap for Semiconductors」です。ますます困難になる半導体製造の将来の技術課題を分析・予測し、そのソリューション開発をシンクロさせることで、個々の企業の枠を超えた業界全体のコスト低減を目指すためのものでした。1998年からは日本、韓国、台湾、欧州の代表も策定に加わったITRSに生まれ変わり、以来、グローバルな半導体産業のコンセンサスとして、広く活用されてきました。

※1965年のSIAのロードマップ、あるいは1987年のSEMATECHのロードマップまでさかのぼることもできます。

 当然ながら、ロードマップの検討には半導体製造装置・材料サプライヤーも参画し、合意された技術目標の実現に向けて、それぞれの製品開発を進めてきました。これがサプライヤーにとっていかに重要な情報であったかは言わずもがなでしょう。ITRSの技術目標とは、プロセスの微細化とウエハーの大口径化を意味しており、世代が進むにつれて目標の達成は困難を極めるようになりました。そのため、サプライヤー側での開発投資も莫大な金額になっていました。そのリスクを緩和する機能をITRSが担っていたと言えます。