IoT(Internet of Things)用半導体は莫大な数量の需要がある一方、個々の価格はあまり高くないと考えられています。そこで、信頼性の高いデバイスを低コストで製造するためのイノベーションが必要となっています。

 米調査会社IC Insights社は2016年9月の発表において、IoT用半導体需要の2014年から2019年にかけての年平均成長率が19%を上回り、市場規模が296億米ドルに達すると予測しています。これはWSTS(世界半導体市場統計)が予測する2018年の半導体市場3540億米ドルの8%に相当します。IoT用半導体はセンサーや通信デバイスを中心にあらゆる「Things」に搭載されますから、数量ベースで見ると半導体市場に占める存在感はさらに大きなものになります。

 充分な品質を提供しながら製造コストを下げるひとつの解は、200mm、150mmといった低コストラインでの製造ですが、IoTに求められる桁違いのコストダウンを実現するためには不十分でしょう。そこで、もうひとつの解となるのが「ロールtoロール」のインクジェット印刷技術によるプリンテッドエレクトロニクスです。

 プリンテッドエレクトロニクスは設備および製造コストが圧倒的に有利です。フレキシブルな有機材料を基板に用いるため、IoTデバイスの有力な利用形態であるウエアラブルにも適しています。体の動きに合わせて、形状を自由に変えることができるからです。

 ただし、ご存知のように有機トランジスタの製造はまだ実験段階にあります。そこで注目されるのが、シリコンと有機の2つの技術をハイブリッドに融合するフレキシブル・ハイブリッド・エレクトロニクス(FHE)です。印刷技術では現時点で実現が難しいメモリーやマイコン、あるいはMEMS構造を必要とするセンサーなどをプリンテッドエレクトロニクスに実装することで、機能・性能面とコスト面の両立を図ろうとする新しいデバイス製造技術です。