第1回から第8回まで、新しい事業や新しい商品を企画・開発する際には、5つの壁があり、特に既存事業の下で最適化された組織、評価基準、予算の仕組みが障害になることを述べてきました。最終回である今回は、市場投入に向け、イノベーションを進めるプロセス、人(組織)はどうあるべきかを論じていきます。

イノベーションは価値重視のプロセスとゲート設定が必要

 あまり売れないもの、市場が求めていないものを上市しないためにも、モノの完成度を上げる投資だけではなく、早い段階で市場に対して価値の検証を行った方がよいことを第6回のコラムで述べました。では具体的にどのように行えばよいのでしょうか。

 既存市場に次モデルを投入する場合は、顧客はある程度見えて、ビジネスモデルも決まっており、「技術開発」を主に開発すればよいことが多いです。ところがイノベーションではそうはいきません。イノベーションを進めるためには、顧客を創造し、価値を定義していく「顧客価値開発」、価値を実現するモノ(製品)やコト(製品を含むサービス)を検討する「技術開発」、そして開発した実現手段を顧客に提供する方法やビジネスとして勝つ方法を検討する「事業開発」の3つが必要です(表1)。イノベーションを進めると言うことは、この3つの開発の完成度を上げることです。

表1 イノベーションを進めるための開発項目
イノベーションを進めるための開発項目
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