ほとんどの電子機器は、大なり小なりプリント基板を使います。そして、プリント基板業界の試作モデルの動きを見ていると、新製品の立ち上げ状況がある程度推定できると言われています。新規のエレクトロニクス製品の立ち上げは、プリント基板の製作から始まるからです。特に台湾は「世界の民生用エレクトロニクス製品の生産基地」と言われるほど市場シェアが高いので、そこで消費されるプリント基板の動きは、世界のエレクトロニクスの先行指標となっています。

 台湾プリント基板産業は2016年に、リーマン・ショックの影響を受けた2009年以来となるマイナス成長を記録しました。これは、プリント基板の主要な需要家であるパソコンの低迷が続いた中で、スマートフォンの成長が鈍化したためです。今年(2017年)に入っても出荷状況は不安定で、例年の動きとは異なる、毎月上下を繰り返す状況が続いていました。2017年初からの出荷額累計はマイナス成長が続いていました。

 しかし、第2四半期も終わり近くなって、プラス成長が安定して続くようになってきています。例年、下半期に入ると、台湾のエレクトロニクス産業は年末商戦へ向けてのスパートがかかります。プリント基板の出荷も直線的に増大します。今年は、上半期は不安定だったものが、下半期に入って、順調な成長傾向に戻ってきているようです。2017年初から7月までの出荷額累計は、前年同期比で2.6%のプラス成長になっています。この傾向が続けば、2017年通期の出荷額の成長率は5%を超える可能性も出てきます。

図1 台湾のプリント基板の生産金額(台湾の上場メーカー)
図1 台湾のプリント基板の生産金額(台湾の上場メーカー)
TPCA統計資料より作成。
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 このような市場好転の背景には、パソコン市場の回復があります。世界的にはいまだにマイナス成長が続いていますが、台湾メーカーに限ってみれば、プラス成長の領域に戻ってきています。米国内の量販店の展示を見ても、韓国、中国、日本メーカーの製品の影が薄いのに対して、台湾ブランドおよび台湾製米国ブランドの製品には勢いが見られます。

 加えて、スマートフォンの新機種立ち上げが始まったことが追い風になっています。昨年に比べて新製品の立ち上げが1カ月ほど早まり、しかも増加率が大きくなっているのです。このような市場の変化は、特にフレキシブル基板の需要に大きく反映されています。7月の出荷額では、前年同月比で硬質基板が1.5%の成長にとどまっているのに対して、フレキシブル基板は26.6%の大きな伸びになっています。年初からの累計でも、9.9%と2桁に近い成長を果たしています。通期では、2桁成長となるのはほぼ確実でしょう。台湾のフレキシブル基板生産に占める米Apple社向けの割合はかなり大きく、9月に発表された「iPhone」の新製品のためのプリント基板生産も大きなけん引役となっています。