マサチューセッツ州の州都であるボストンは、合衆国きっての古都と言われる都市で、有数の観光地でもあります。そして、ここには様々な交通機関が集まっています。

 市内には地下鉄が5系統複雑に敷設されており、郊外に向けて放射状に伸びる10本ほどのCommuter Rail(通勤列車)があり通勤通学者の足になっています。さらに、ニューヨークやメイン州ポートランドにまで至る長距離列車のアムトラックもあります。そのほか、観光用にはトロリーバスや、モビーダックの愛称で知られている大型水陸両用車があります。

 さて、ボストンの地下鉄についてなのですが、5系統の内、シルバーラインと呼ばれている路線が一番新しいことは知っていました。一方で、ボストン空港内には、各ターミナルビルを周る幾つかのバス路線があり、その1つがシルバーラインと呼ばれていて、ダウンタウン方面に行くことも認識していました。しかし両者はまったく別のものだと理解しておりました。一方は地下鉄で、一方はバスなのですから。ところが最近になって、前回の記事でも触れたBoston Convention & Exhibition Centerに地下鉄で行くために、レッドラインのSouth Stationまで行って、シルバーラインに乗り換えるために、プラットホームを移動して驚きました。なんとそこにはレール軌道がないのです。

レールのない、がらんどうのトンネル
レールのない、がらんどうのトンネル
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 そこの乗客は当たり前のようにプラットホームで列を作って待っています。やがてやってきたのは、日本の地下鉄のイメージからは程遠い、2両編成のトロリーバスでした。

やってきたシルバーラインのトロリーバス
やってきたシルバーラインのトロリーバス
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 しかしながら、そのトロリーバスの動きを見て、謎は氷解しました。シルバーラインとは、電気モーターとディーゼルエンジンを搭載したハイブリッドトロリーバスだったのです。強いて言えば、ハイブリッド・サブウェイ(地下)トロリーバスとでもいえる代物なのです。ダウンタウン地域では、専用の地下道を電気で走り、郊外に出ると、トンネルから出て、架線のない一般道をディーゼルエンジンで走るのです。私が空港で見ていたのは、電気を取るためのパンタグラフは収納し、一見普通の大型バスにしか見えないトロリーバスだったのです。

トンネルから出て行くトロリーバス。この後、ディーゼルに切り替わる。全体は2両編成が標準
トンネルから出て行くトロリーバス。この後、ディーゼルに切り替わる。全体は2両編成が標準
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