以前から何度か触れていますが、台湾のプリント基板市場の動向は、世界の民生用エレクトロニクス市場、電子部品、電子材料の市場動向を見る上で、極めて価値のある情報を発信していると言えます。これは、台湾が世界の民生用電子機器の生産基地となっているためです。

 パーソナル・コンピューターとタブレットPC、ゲーム機、デジタルカメラ、スマートフォンの大部分が、台湾のメーカー、あるいは台湾メーカーの中国工場、東南アジア工場で組み立てられています。米Apple社の全製品、ソニー、任天堂、米Microsoftのゲーム機の全て、米DELL、米HPなどの製品の大部分が台湾のEMSメーカーによって生産されています。最近では、韓国や中国のブランドメーカーが、台湾のEMSメーカーに生産を委託するケースが増えています。中には、新興の中国メーカーが、自社では作りきれないために台湾のEMSメーカーに生産を委託し、委託を受けた台湾メーカーは、コストダウンのために中国工場で組み立てを行っている、というような笑えない話もあります。

 このような台湾のエレクトロニクス産業が消費するプリント基板の量は膨大なものになります。現在では、その大部分を台湾の基板メーカーが供給するようになりました。かつては、台湾の基板メーカーの技術レベルが低かったため、難易度の高い基板は日本や米国から輸入していました。1990年代に技術力が大幅に向上し、21世紀に入ってからは、ハイエンドの製品を含めて、ほぼ台湾内のメーカーから調達できるようになりました。このため、2000年以降、台湾のプリント基板生産は、2009年の世界同時不況の時を除いて単調増加しており、2010年からは世界市場でトップの座を維持しています。

 そのようなわけで、台湾のプリント基板は、世界のエレクトロニクス産業に直結しているので、台湾の基板メーカーの出荷動向を見ていれば、かなりの精度でエレクトロニクス業界の動向を推定できます。Apple社は機密情報の管理が厳格なことで有名ですが、台湾の基板メーカーやEMSメーカーの動きを見ていれば、新製品のリリース時期や規模などは分かってしまいます。