日本の大手電気メーカーが低迷状態に陥ってから随分経ちます。そして、このごろでは東芝の巨額損失問題がメディアを賑わしています。振り返れば、日本の電機メーカーの多くが経営危機状態となってしまいました。三洋電機はパナソニックに吸収合併され、シャープは台湾のEMS最大手の台湾鴻海精密工業の子会社となって生き延びていますが、事業の方向性はほぼ親会社によって決められるようになっています(だからこそ、シャープは生き残れたわけで、それ自体は悪いことだとは言えません)。最近、海外のメディアがシャープについてのニュースをリリースする時は、“Hon Haiの日本子会社の”と言う枕詞が必ず付いています。

 日立製作所は、重荷になっていたHDD事業を売却し、パナソニックはプラズマディスプレイ事業をクローズし、ソニーは多くの事業を切り離して、それぞれなんとか黒字化を果たしました。かつて日本メーカーが世界のエレクトロニクス業界を引張っていましたが、そのような時代と現状には多くの隔たりがあります。

 そこへ出てきた東芝の問題です。「東芝よ、お前もか!」という思いを持たれた方は少なくないでしょう。個人的な話になりますが、私は東芝とは40年近いビジネス関係を持っています。私自身、東芝の技術カルチャーに共感していましたし、実際に多くのプロジェクトを成功させてきました。私は部材ベンダーの立場でしたが、東芝は“信頼できる親方”というイメージでした。「東芝のエンジニアの要求であれば、かなり無理をしても実現させなくては」という思いがありました。実際に、それでほとんどうまくいきました。ところが、今回のWestinghouse問題が発覚し、裏切られたという思いです。

床に積み上げられ、在庫一掃セールとなっている東芝の大型4Kテレビ
床に積み上げられ、在庫一掃セールとなっている東芝の大型4Kテレビ
東芝と並んで在庫一掃セールになっているWestinghouse社ブランドの4Kテレビ
東芝と並んで在庫一掃セールになっているWestinghouse社ブランドの4Kテレビ
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 今回の問題が顕在化してから、米国の量販店における日本ブランド製品の扱いに注目しています。ある量販店で見た光景はショックでした。フロアに東芝ブランドの大型テレビが梱包のまま積み上げられ、その上に値札が付けられています。現物の展示はありません。その隣には、なんとWestinghouse社製の大型テレビが同じように積み上げられているのです。値段は同じです。東芝やWestinghouseが自社工場で組み立てていたとは考えにくいのですが、実際に製造しているメーカーの表示はありません。最近、東芝のテレビが売り場に並ぶことはありませんでしたので、これは明らかに、在庫一掃のバーゲンセールです。だいたいWestinghouseが液晶テレビを販売していたことなど聞いたことがありませんでした。Westinghouseといえば、日本では原子力発電設備のメーカーという認識だったと思いますが、実際には総合電気メーカーとして液晶テレビの販売もしていたのですね。ちなみに49インチの4Kテレビの価格は449.99ドル(5万円程度)です。