税務署の入り口の案内。この奥の大部屋で端末を使っての申告が行われる
税務署の入り口の案内。この奥の大部屋で端末を使っての申告が行われる
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 確定申告の季節がやってきました。納税者にとっては憂鬱なシーズンです。一般の給与所得者は申告の義務はないのですが、給与の他に株式配当、預金利子、原稿料などの収入があると、源泉徴収税額の一部が戻ってくる可能性があります。

 また、多額の医療費がかかっていると、控除の対象となります。私は30年以上前から毎年確定申告を行ってきていますので、だいぶ要領が良くなってきたと思います。一方で、申告プロセスもずいぶん変わってきています。

 以前は確定申告といえば、すべて所定の用紙に書き込んで提出するため、結構時間がかかりました。計算を行うための根拠となる文書の確認と整理が大変で、そこに費やす労力の方が多いくらいです。記載ミスや計算間違いも少なからずありました。

 税務署の職員の態度も、間違いの指摘、不正探しという感じがしたものです。いきおい、申告する側としても、何かいちゃもんをつけられるのではないかと、ビクビクしていました。別に脱税を考えているわけではないのに、税務署員との面談を思うと、憂鬱になったものです。

 ところが、何年か前から確定申告がデジタル化されるに至って、様相は一変しました。全国レベルで、統一されているかどうかは定かでありませんが、私が申告する千葉市の場合は次のようなものです。まず、最初は受付での行列から始まります。申告が集中する期間は、この行列待ちだけで、1時間以上かかります。ようやく、受付となると、簡単な申し込み書類に必要事項を書き込み、次の行列に並びます。こちらは10~20分程度の待ち時間です。

 やがて順番が来ると、データ入力の部屋に案内されます。ここにはコンピュータ端末が数十台並んでおり、それぞれ税務署の職員が付きます。データの入力は、申告者ではなく、職員が行います。職員は、申告者が持参した書類を確認しながら、端末にデータを入力していきます。彼らはエキスパートですから、書類の確認もデータの入力も、おそらく素人の申告者の10倍以上のスピードで処理します。

 たまに、判断に迷うことがあると、待機している上位の職員を呼んでアドバイスを受けます。入力そのものは、20分前後で完了し、最終的な計算結果が表示されます。還付額がプラスであれば、振り込みのための銀行口座データなどを入力します。特に異存がなければ、結果がプリントアウトされて、申告者の控えとなります。これで、申告作業は終りで、書類に捺印や署名する必要もありません。

 また、職員の対応もかなり違います。何か問題点を見つけ出そうと詮索する態度ではなく、申告者のデータをスマートに、かつ素早くまとめようとする態度がうかがえます。申告者はまるでお客様扱いです。以前だったら、怖い存在だった税務署が、今では頼りになる味方なのです。