2017年を振り返ると、とにかく不正が多かったという印象だ。本連載でたびたび取り上げた東芝の巨額減損や相次ぐ決算発表の延期の原因となった監査法人との対立も、さかのぼれば同社の原発工事やPC事業に関する不正会計が発端だった。6月には富士ゼロックスのリース会計に関する架空売上計上も明らかになった。

 そして、秋以降は製造業の品質に絡む不正が相次いだ。神戸製鋼所では10年前から品質データを改ざんしていたことが発覚。その後、三菱マテリアルや東レも、同種のデータ改ざんがあったことを発表した。

 日産自動車とSUBARUでは無資格者による完成検査が問題となった。明星食品では、外部から仕入れたチャーシューを食肉製品製造業に関する営業許可のない施設で加工していた疑いが発覚し、該当製品を自主回収した。

いずれも業績に大打撃

 不正が発覚した企業はいずれも業績に大きな影響が出ている。無資格者による完成検査の舞台となった日産車体は、2018年3月期の連結最終損益が45億円の赤字になる見通しだ。無資格検査の再発防止費用に加えて、再発防止の一環として生産ラインのスピードを通常の6~7割に落としたことから、新車生産台数が当初計画の16%減になっているのが響いている。

 SUBARUは、2017年10月に無資格検査が発覚して以降、受注台数の減少が止まらない。日本経済新聞などの報道によると、11月は前年同月比1割強の減少、12月は3割の減少で推移しているという。SUBARUは運転支援システム「アイサイト」などが高く評価されたこともあって、過去5年で世界全体の販売台数を7割強増やすほどの急成長を遂げてきた。それだけに今回の信用失墜に伴う受注減は大打撃だ。

 ここで、売上高の減少によって利益がどの程度減少するかを試算してみよう。売上高が減少すれば変動費も減少するので、売上高の減少に伴う利益の減少は限界利益(=売上高-変動費)で考えるのが分かりやすい。

 ここでは近似的に製造原価の中の材料費のみを変動費とみなすと、2017年3月期におけるSUBARUの売上高限界利益率(=限界利益÷売上高)は約43%と計算できる。2017年3月期の売上高は約3兆3000億円なので、仮に通期で売上高が3割減少すれば、4257億円(=3兆3000億円×43%×30%)の減益となる。

 SUBARUの2017年3月期の税引前当期純利益は3947億円だったので、4257億円の減益が発生すれば、それだけで最終赤字になる。通期で売上高が3割も減少する可能性は低いとしても、不正に伴う特別損失や再発防止策に係る費用の増加を考えれば、SUBARUが最終赤字になる可能性は決して小さくない。