米IBMの2017年度第3四半期(7~9月)決算が、22四半期連続の減収となった(リリース:PDF)。2017年10月19日付日本経済新聞の見出しには「ハード頼み 変化に遅れ」とある。同紙によれば、「クラウドや人工知能(AI)といった成長分野がけん引する収益構造には移行できていない」ということらしい。その根拠として挙げているのが、新型メインフレームの好調さを強調するバージニア・ロメッティCEO(最高経営責任者)の姿だ。「大きな成長が見込めないハードに一喜一憂する姿に、ロメッティ体制の限界が伺える」と記している。

 果たして、IBMの減収は変わらぬハードへの依存が原因なのだろうか。

成長分野のクラウドやAIで競争が激化

IBMは以下の6つの報告セグメントに分けて財務状況を開示している。

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 図1は、2017年第3四半期のセグメント別の売上高構成比である。これを見ると、クラウドを手掛けるTechnology Services & Cloud Platformの売上高比率は44%であり、全体の半分に迫る比率を占めている。次いで、AIを扱うCognitive Solutionsが23%、コンサルティングやシステムインテグレーションなどの役務提供型事業であるGlobal Business Services (GBS)が21%となっている。ここまでで売上高の実に90%弱を占める。

2017年度第3四半期の売上高構成比
2017年度第3四半期の売上高構成比
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 サーバーやストレージなど問題のハードウエアはSystemsセグメントに含まれる。Systemsセグメントにはオペレーティングシステムもわずかに含まれるので、純粋なハードウエアの売上高は全体の9%に満たない水準だ。この直近データを見る限りIBMがハードに依存しているとはとても言えないが、時系列ではどのように推移してきたのだろうか。

 図2は、10年間にわたる売上高と売上高構成比の推移だ。2015年度以前の報告セグメントは現在と異なっているため、ここでは純粋なハードウエアによる売上高だけを抽出し、それ以外を「ソフトウエア&サービス」にまとめている。

売上高と売上高構成比の推移
売上高と売上高構成比の推移
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 これを見ると、2007年度にハードウエアはまだ20%強を占めていたが、2016年度には7%になっている。ハードウエアの売上高構成比は年を追うごとに着実に低下してきたことが分かる。

 直近のデータを見ても、時系列推移のデータを見ても、IBMが依然として「ハード頼み」とはとても言えない。現在のIBMは、売上高のほとんどをクラウド、AI、サービスで稼いでいるのである。

 ここで注目すべきは、ハードへの依存を着実に下げ、ソフトウエアとサービスにますます力を入れているにもかかわらず、全体の売上高が減少していることだ(図2の折れ線グラフ)。それはつまり、重点領域であるはずのソフトウエアとサービスが振るわないということだ。

 その理由は明らかだ。クラウドやAIは今やIT業界一の注目の的だ。AIに至っては全人類の注目の的と言ってもいいだろう。それだけに、競合企業がひしめき合う群雄割拠の状態になっている。