東芝の「不適切会計問題」のほとぼりがさめ切らぬ間に、他の企業でも様々な不正が相次いで発覚している。

 独フォルクスワーゲン(VW)は、ディーゼル車の排ガス基準をクリアするために、検査中だけ排ガスを低減する不正ソフトを搭載していた。そうかと思えば、旭化成建材は横浜市の大型マンションの杭打ち工事において、地盤調査のデータを改ざんしていた。このマンションは実際に傾いてしまっており、実害が発生している。

不正会計で顧客からそっぽを向かれたオリンパス

 これらの不正は、間違いなく両社の財務状況に多大な影響を及ぼすだろう。その行方を占うために、オリンパスの例を見てみよう。

 1990年代初頭のバブル崩壊時、オリンパスは有価証券の投資で多額の損失を抱えることになった。しかし歴代の会社首脳はそれを知りつつ公表せずに、10年以上の長期にわたって隠し続けた。そしていよいよ損失を隠しきれなくなった2008年、同社は損失を処理するために実態とかけ離れた高額な企業買収を行い、それを投資失敗による特別損失として計上して減損処理した。本来は有価証券投資に伴う損失だったものを、企業買収による特別損失に紛れ込ませようとしたのである。

 2011年7月、雑誌のスクープとイギリス人社長の早期解任をきっかけに本件は明るみに出た。社会の大きな注目を集める大事件となり、株価は急落、会長らは辞任、同社は上場廃止の瀬戸際にまで立たされた。

 ここで注目したいのは、売上高の動きである。は事件発覚前後の四半期ごとの連結売上高の推移である。事件発覚後、売上高は明らかに減少している。売上高が減少しているということは、顧客からそっぽを向かれたということである。

図●オリンパスの連結売上高の推移
図●オリンパスの連結売上高の推移

 オリンパスの事件は、有価証券投資という製造業の本業とは関係ない金融取引に伴う損失隠しだ。オリンパスの製品に機能や品質の面で何らかの問題があったわけでは全くない。それなのに、顧客はオリンパスの製品を買わなくなったのである。