東芝は2017年9月20日、子会社である東芝メモリ株式会社(以下、東芝メモリ)の売却に関して、米投資会社のベインキャピタルを中心とする日米韓連合(以下、譲受会社)と株式譲渡契約を結ぶことを取締役会で決議したと発表した(東芝メモリ株式会社の株式譲渡に関するお知らせ:PDF)。続く9月28日には、譲受会社との間で株式譲渡契約を結んだことも発表した(東芝メモリ株式会社の株式譲渡契約締結 に関するお知らせ:PDF)。

 一時は、米Western Digital社を中心とする陣営への株式譲渡がほぼ確定的との報道もあったが、最終的にベインキャピタルを中心とする日米韓連合に落ち着くこととなった。

 今回は東芝メモリ株式売却でポイントとなった債務超過の解消と一定の議決権確保、それに残された懸念について解説する。

2兆円で売却、「債務超過」を解消へ

 今回の決定によって、東芝は100%子会社である東芝メモリの全株式にあたる3000株を譲受会社に売却することになる。

 東芝メモリは、もともと東芝の一事業であったメモリ事業を2017年2月の会社分割によって100%子会社にしたものだ。分割時のメモリ事業の純資産は6137億円である(2017年3月期の有価証券報告書:PDF)。

 その全株式を総額2兆円で売却する。この売却額と売却時の東芝メモリの純資産額との差額が売却益として東芝に計上されることになる。東芝の試算によると、その額は約1兆800億円(税引前)。前掲のリリース「東芝メモリ株式会社の株式譲渡に関するお知らせ」によると、この株式売却によって東芝の株主資本は約7400億円の増加が見込めるという。

 一般的な債務超過の意味は純資産のマイナスなので、純資産額をプラスにできれば一般的な意味での債務超過の解消となる。東芝の2017年6月30日時点の純資産(連結)はマイナス2233億円なので、これをプラスにすれば債務超過が解消される。しかし、それだけでは上場廃止は免れない。なぜなら、東京証券取引所が定める上場廃止基準の「債務超過」の意味は、純資産の内訳項目である株主資本がマイナスになることだからだ(関連記事「東芝報道に見る日本独自の『債務超過』の使い方」)。

 東芝の2017年6月30日時点の株主資本(連結)はマイナス5042億円。今回の売株式却で見込んでいる7400億円の株主資本の増加で、なんとかこれをプラスにできそうになったわけである。